## リストの政治経済学の国民的体系の表象
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リストの政治経済学における「国民」概念
リストの経済学の中心には「国民」という概念が存在します。 彼は、当時の古典派経済学が唱える普遍的な経済法則は、すでに産業革命を達成し、経済的覇権を握っていたイギリスにのみ有利なものであると批判しました。 そして、後発国であるドイツがイギリスに追いつき、追い越すためには、国民経済の保護育成こそが不可欠であると主張しました。
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「生産力」の重視と「国民的生産力」
リストは、一国の富の源泉を「交換価値」ではなく「生産力」に求めました。 彼は、物質的な財の生産だけでなく、教育や科学技術、文化、道徳、法制度といった広範な要素を包含する「国民的生産力」の増大こそが、真の国家の発展につながると考えました。
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「幼稚状態」から「開花状態」へ:発展段階論
リストは、各国の経済発展を段階的に捉え、それぞれの段階に応じて適切な経済政策が異なるという「発展段階論」を唱えました。 彼は、後発国が「牧畜状態」「農業状態」といった「幼稚状態」から「農業・工業・商業状態」という「開花状態」へ移行するためには、保護貿易政策などを通じて国内産業を育成する必要があると主張しました。
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保護貿易政策と「教育的関税」
リストは、後発国が先進国との自由競争にさらされると、 nascent industries (萌芽的産業)が駆逐され、経済的自立が阻害されると考えました。 そこで、彼は一時的な保護貿易政策を採用し、「教育的関税」を課すことで、国内産業を保護・育成する必要性を訴えました。 これは、国内産業が国際競争力を持つまでの一時的な措置であり、最終的には自由貿易へ移行することを目指していました。