## リカードの経済学および課税の原理の周辺
リカードの生涯と時代背景
デヴィッド・リカード(David Ricardo, 1772-1823)は、イギリス古典派経済学を代表する経済学者の一人です。ユダヤ系ポルトガル人の裕福な株式仲買人の家に生まれ、14歳で家業を手伝い始め、20代前半には株式取引で財を成しました。その後、アダム・スミスの『国富論』を読んで経済学に興味を持つようになり、1817年に主著『経済学および課税の原理』を出版しました。
リカードが活躍した時代は、産業革命の進展に伴い資本主義経済が急速に発展する一方で、ナポレオン戦争後の経済的混乱や穀物法をめぐる論争など、社会不安が高まっていた時期でした。リカードは経済学を通して、当時の社会問題の解決策を探ろうとしました。
『経済学および課税の原理』の内容
リカードの主著『経済学および課税の原理』は、経済学の基本的な問題を体系的に論じた著作です。本書は全32章からなり、価値論、分配論、国際貿易論、経済成長論、課税論など、幅広いテーマを扱っています。
価値論
リカードは、商品の価値は、それを生産するために必要な労働量によって決まるとする労働価値説を主張しました。ただし、土地の希少性による地代の発生や、資本の投入による生産期間の違いなどを考慮し、スミスの労働価値説を修正しました。
分配論
リカードは、国民所得は地代、賃金、利潤の3つに分配されると考えました。地代は土地の希少性から生じる超過利潤であり、賃金は労働者の生存に必要な生活費の水準で決まるとしました。利潤は、資本家が生産活動を行うことによって得られる報酬です。
国際貿易論
リカードは、国際貿易においても労働価値説に基づいた比較優位説を展開しました。これは、各国がそれぞれ最も得意とする財の生産に特化し、貿易を行うことで、すべての国が利益を得られるという考え方です。
経済成長論
リカードは、経済成長は資本の蓄積によって促進されると考えました。しかし、人口増加に伴い食糧需要が増加し、地代の負担が増加することで利潤率が低下し、経済成長は鈍化するという「定常状態」に達すると予測しました。
課税論
リカードは、課税が経済活動に与える影響を分析し、経済効率を阻害しないような課税の原則を提唱しました。特に、地代に対する課税は経済効率を損なわないと主張し、穀物法に反対しました。
リカード経済学の影響
リカードの経済学は、その後の経済学の発展に大きな影響を与えました。特に、マルクス経済学や新古典派経済学など、その後の経済学の主要な学派に影響を与えました。