リア王のエドマンドが抱く感情
シェイクスピアの悲劇「リア王」に登場するエドマンドは、複雑で多面的なキャラクターであり、その内面世界は彼の行動と発言を通じて浮かび上がってきます。エドマンドの感情は、彼の身分の低さに対する不満、権力への渇望、そして最終的には彼の行動に対する後悔という、三つの主要な軸を中心に展開していきます。
身分の低さに対する不満
エドマンドはグロスター伯の庶子であり、その出自からくる劣等感と不満が彼の感情の核を形成しています。彼は正統の息子エドガーと比べて、爵位や遺産を継ぐことができない身分の低さに苦しんでいます。この不満は彼を動かす原動力となり、彼の野望を燃え上がらせることになります。エドマンドはこの不公平を是正する手段として、策略と欺瞞を用いることを選択します。
権力への渇望
エドマンドの感情の中で顕著なのは、権力への深い渇望です。彼は自身の社会的地位を向上させるため、そして自分が直面する不公正を乗り越えるために、あらゆる手段を正当化します。彼の野心は彼をグロスター伯の座へと押し上げ、さらには王国の支配者へと目を向けさせます。エドマンドは自己中心的で冷酷な計算に基づいた行動を通じて、自らの目的を果たそうとします。しかし、この過程で彼が裏切ることになる人々の感情や命を軽んじることになり、彼の人間性の欠如を露呈します。
行動に対する後悔
物語の終盤になると、エドマンドの感情には変化が見られます。彼の内面で後悔の念が芽生え始め、彼が行ってきた選択とその結果に対する反省が見え始めます。特に、彼が愛することになる女性たち、ゴネリルとリーガンへの裏切りや、自身の野望が引き起こした破壊と死に対して、エドマンドはある種の悲哀を感じるようになります。彼の最期の行動、特にエドガーとの対決後に見せる態度は、彼が自分の行いをある程度悔い改めていることを示唆しています。
エドマンドの感情は、彼自身の内面的な葛藤と外的な状況が複雑に絡み合った結果です。彼は自らの身分の低さから逃れようとし、その過程で権力への渇望を露わにします。しかし、その野心がもたらす破壊と悲劇を目の当たりにし、彼は自身の行動に対する後悔の念を抱くようになります。エドマンドの感情は、「リア王」における人間の脆弱性と道徳的な葛藤を象徴していると言えるでしょう。