## ラートブルフの法哲学の力
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ナチスへの抵抗から生まれた法哲学
グスタフ・ラートブルフは、ワイマール時代の著名な法学者でしたが、ナチス政権下でユダヤ系であったことから職を追われました。
この経験を通して、彼は、法の形式的な正当性だけでは、真の正義を実現するには不十分であることを痛感しました。
法律が、たとえ適切な手続きを経て制定されたとしても、それが人間の尊厳や社会の正義に反するものであれば、もはや法として認めることはできないと考えたのです。
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法の三つの側面:相対性、目的性、実定性
ラートブルフは、このような経験と考察から、法には「相対性」「目的性」「実定性」という三つの側面があるという考えを打ち出しました。
* **相対性**: 法は時代や社会状況によって変化するものであり、絶対的なものではありません。
* **目的性**: 法は、正義の実現という目的のために存在します。
* **実定性**: 法は、国家によって制定され、強制力を持つという側面も持ちます。
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法の不当性と抵抗権
ラートブルフは、法の三つの側面を踏まえ、法の実定性と目的性のバランスが重要であると説きました。
実定性のみを重視しすぎると、ナチス政権下で制定されたような、不当な法律であっても有効とされてしまう可能性があります。
そこで、ラートブルフは、「法の不当性」という概念を提唱し、法が人間の尊厳を著しく侵害する場合には、もはや法としての妥当性を失い、抵抗の対象となりうるとしました。
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現代社会への影響
ラートブルフの法哲学は、ナチス政権の反省から生まれたものでしたが、現代社会においても重要な示唆を与えています。
特に、グローバリゼーションや情報化の進展によって、社会が複雑化する中で、法の役割やその限界について、改めて問い直す必要性を示唆しています。