ラ・メトリの人間機械論の秘密
ラ・メトリの生涯と著作
ジュリアン・オフレ・ド・ラ・メトリ(1709-1751)は、フランスの医師、哲学者であり、唯物論の先駆者として知られています。彼は医学教育を受け、軍医としての経験を通して人間の身体の仕組みに深い関心を抱くようになりました。
ラ・メトリの代表作である『人間機械論』(1748年)は、当時の社会に大きな衝撃を与えました。この著作で彼は、人間を含むすべての動物は複雑な機械に過ぎず、魂や精神のような非物質的な存在は存在しないと主張しました。この主張は、伝統的な宗教観や人間観に挑戦するものであり、激しい批判を浴びることになりました。
人間機械論の中心的な主張
『人間機械論』で展開されるラ・メトリの主張は、当時の医学や生理学の知見に基づいています。彼は、人間の身体が様々な器官や組織から構成され、それらが相互に作用することで生命活動が維持されていることを詳細に解説しました。
ラ・メトリは、動物実験や解剖の結果を引用しながら、感覚、運動、思考といった人間のあらゆる機能が、物質的な過程によって説明できると主張しました。彼は、脳の構造と機能に特に注目し、精神活動は脳内の物理的な変化に還元されると考えました。
ラ・メトリの主張の根拠
ラ・メトリは、人間の身体と動物の身体の類似性を根拠の一つとして挙げました。彼は、動物にも人間と同じように感覚や感情、ある程度の知性があることを指摘し、人間だけが特別な存在であるという考えを否定しました。
また、ラ・メトリは、病気や怪我によって人間の精神状態が変化することを例に挙げ、精神と身体の密接な関係を強調しました。彼は、精神活動が物質的な脳の働きに依存していることを示唆することで、唯物論的な立場を補強しようとしました。