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ラ・メトリの人間機械論の周辺

## ラ・メトリの人間機械論の周辺

1.ラ・メトリの生涯と著作

ジュリアン・オフレ・ド・ラ・メトリ(Julien Offray de La Mettrie, 1709-1751)は、フランスの医師、哲学者です。医学を修めた後、軍医として従軍した経験から人間の肉体と精神の関係について考察を深め、機械論的な立場から人間の精神活動を説明しようと試みました。彼の代表作である『自然と恩寵の調和』(1745年)は、デカルトの二元論を批判し、魂と肉体は不可分であるという唯物論的な見解を示したため、物議を醸しました。その後、匿名で発表した『人間機械論』(1748年)において、人間は複雑な機械に過ぎないと主張し、大きな反響を呼びました。この著作は、当時の宗教的・哲学的な権威に真っ向から挑戦するものであり、ラ・メトリは亡命を余儀なくされました。

ラ・メトリの主要な著作は以下の通りです。

* 『自然と恩寵の調和』(Traité de l’âme, 1745年)
* 『人間機械論』(L’homme machine, 1748年)
* 『動物機械論』(Les animaux plus que machines, 1750年)

2.『人間機械論』の内容

『人間機械論』において、ラ・メトリは、人間を物質のみからなる機械と捉え、精神活動を含めた人間のあらゆる営みを物質の運動によって説明しようとしました。彼は、人間の身体が複雑な機械であるのと同様に、精神もまた脳という器官の機械的な働きによって生み出されると主張しました。

ラ・メトリは、人間と動物の間に本質的な違いはなく、程度の差しかないと考えました。動物の行動が本能や感覚に基づく機械的な反応であるように、人間の思考や感情もまた、脳内の物質的な過程の結果であると彼は論じました。

3.『人間機械論』の影響

ラ・メトリの『人間機械論』は、当時のヨーロッパ社会に大きな衝撃を与えました。彼の唯物論的な思想は、神の概念や人間の特別な地位を否定するものとして、宗教界や哲学界から激しい非難を浴びました。しかし、その一方で、彼の思想は、啓蒙主義の潮流に大きな影響を与え、後の唯物論や無神論の発展に貢献しました。

また、『人間機械論』は、医学や生物学の分野にも影響を与え、人間の身体と精神を科学的に研究する道を開きました。現代の神経科学や認知科学においても、ラ・メトリの思想はなお重要な意味を持ち続けています。

4.『人間機械論』への批判

ラ・メトリの『人間機械論』は、その後の時代においても多くの議論を巻き起こしてきました。彼の唯物論的な人間観は、人間の精神の複雑さや主体的な経験を十分に説明できていないという批判もあります。また、彼の思想は、人間の尊厳を軽視し、倫理的な問題を引き起こす可能性も指摘されています。

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