## ランケの世界史の批評
###
史料批判の先駆者としての評価
レオポルト・フォン・ランケは19世紀ドイツの歴史家で、「近代歴史学の父」と称されます。彼は史料批判を歴史研究の中心に据え、主観的な解釈や推測を排し、史料に基づいて過去を「ありのままに」記述することを目指しました。
ランケは、歴史家は過去の出来事を直接目撃することはできないため、一次史料を批判的に分析することによってのみ、過去の出来事を可能な限り正確に再構成できると主張しました。一次史料とは、事件や出来事が起こった時代に作成された文書、記録、遺物などを指します。
彼は史料の真正性、信頼性、客観性を検証するために、様々な方法を開発しました。例えば、文書の作成者、作成時期、作成目的などを特定し、文書の内容を他の史料と比較検討することで、その史料の信憑性を評価しました。
ランケの史料批判は、歴史研究に革命をもたらし、歴史学をより科学的な学問へと発展させることに貢献しました。
###
客観性と事実性の限界に対する批判
ランケは「ありのままに」歴史を記述することを目指しましたが、彼の歴史叙述は完全に客観的であったわけではありません。歴史家の立場や時代背景は、史料の選択や解釈に影響を与え、完全に客観的な歴史記述は不可能であるという批判があります。
また、ランケは主に政治史や外交史に焦点を当て、社会史や文化史を軽視する傾向がありました。このため、彼の歴史観は偏っており、歴史の全体像を捉えきれていないという指摘もあります。
さらに、ランケはプロイセン国家を高く評価し、その歴史を美化する傾向がありました。彼の歴史観は、当時のドイツのナショナリズムの高まりと関連しており、彼の歴史叙述は政治的な意図を含んでいた可能性も指摘されています。
###
現代におけるランケ史学の位置付け
現代の歴史学では、ランケが提唱したような完全に客観的な歴史記述は不可能であるという認識が一般的です。歴史家は、過去の出来事を解釈する際に、自身の視点や価値観を完全に排除することはできません。
しかし、ランケの史料批判の手法は、現代の歴史学においても重要な基礎となっています。歴史家は、史料を批判的に吟味し、その限界を認識した上で、歴史を解釈する必要があります.
ランケの歴史叙述は、現代の視点から見ると、限界があることは否めません。しかし、彼の史料批判の手法や歴史学に対する真摯な態度は、現代の歴史家にとっても重要な教訓を与え続けています。