## ラッセルの数理哲学序説の原点
ラッセル自身の哲学的関心の変遷
バートランド・ラッセルは、初期においてヘーゲル哲学の影響を受け、形而上学や倫理学に関心を抱いていました。しかし、論理学者ジュゼッペ・ペアノの仕事に触れたことが転機となり、数学の基礎を明確化することに強い興味を持つようになります。
数学における基礎の危機
19世紀後半から20世紀初頭にかけて、数学は集合論のパラドックス（例えば、ラッセル自身が発見したラッセルのパラドックス）に直面し、「数学の基礎の危機」と呼ばれる状況に陥っていました。この危機を克服するために、数学を論理学によって基礎付けようとする動きが活発化します。
論理主義と「プリンキピア・マテマティカ」
ラッセルは、アルフレッド・ノース・ホワイトヘッドと共に、論理主義の立場から、数学の定理を論理学の公理と推論規則のみを用いて導出することを目指しました。こうして1910年から1913年にかけて出版されたmonumental workが『プリンキピア・マテマティカ』です。
「プリンキピア・マテマティカ」の難解さと第一次世界大戦
『プリンキピア・マテマティカ』は、その内容の難解さゆえに、専門家以外にとって容易に理解できるものではありませんでした。また、第一次世界大戦の勃発により、ラッセル自身の研究活動も中断を余儀なくされます。
より平易な数学哲学の入門書の必要性
こうした状況を背景に、ラッセルは、より平易な形で数学哲学、特に論理主義の立場からの数学の基礎付けについての考えを解説した入門書を執筆することを決意します。この入門書こそが、『数理哲学序説』です。