ラッセルの幸福論と作者
ラッセルの生い立ちと幸福論執筆の背景
バートランド・ラッセルは、1872年、イギリス貴族の家に生まれました。幼少期に両親を亡くし、祖父母の元で厳格なヴィクトリア朝の道徳観の中で育ちます。孤独な少年時代を送る中で、ラッセルは数学や哲学に没頭し、絶対的な真理や幸福の追求に強い関心を抱くようになりました。
ケンブリッジ大学に進学後、ラッセルは数学、論理学、哲学を学び、高い評価を得ます。初期の研究は主に数学の基礎に関するものでしたが、次第に哲学、特に認識論や倫理学にも関心を広げていきます。第一次世界大戦中は、平和主義者としての立場から反戦運動に積極的に参加し、投獄された経験も持ちます。
ラッセルは、20世紀を代表する哲学者の一人として、論理学、数学、哲学、政治、教育など、多岐にわたる分野で膨大な著作を残しました。その中でも、1930年に出版された『幸福論』は、一般読者に向けて書かれた、幸福についての考察書として、ラッセルの代表作の一つに数えられています。
幸福論の内容とラッセルの思想
『幸福論』においてラッセルは、幸福は「受動的な快楽」ではなく、「能動的な喜び」によって得られるものだと主張しています。そして、現代社会において人々を不幸にしている原因として、競争社会、過剰な自我意識、人生に対する誤った価値観などを挙げ、それらに対する具体的な処方箋を示しています。
ラッセルは、偏見や迷信にとらわれず、理性に基づいた思考を重視しました。幸福についても、感情的な満足ではなく、理性的な判断によって得られる永続的な幸福を追求すべきだと考えていました。
ラッセル自身の人生と幸福論
ラッセルは、3度の離婚を経験するなど、私生活では必ずしも幸福な人生を送っていたわけではありませんでした。しかし、彼は晩年まで知的な活動を続け、世界平和の実現に向けて積極的に活動しました。
ラッセル自身の経験と、幸福論で展開された思想との間には、必ずしも整合性があるとは言えない部分もあります。しかし、彼の思想は、現代社会における幸福のあり方について、多くの示唆を与えてくれます。