## ラシーヌのブリタニクスの思考の枠組み
愛と権力
ラシーヌの『ブリタニクス』は、愛と権力が複雑に絡み合い、登場人物たちの行動や心理を揺り動かす様子を描写しています。特に、皇帝ネロンと弟ブリタニクス、そしてユンヌという女性をめぐる三角関係は、この作品の重要な軸となっています。
ネロンは、義理の妹であるユンヌに対して抑えきれない恋心を抱いています。しかし、ユンヌはネロンの異母兄弟であるブリタニクスを愛しており、ネロンの想いに応えることはありません。この状況は、ネロンの心に嫉妬と権力への執着を燃え上がらせます。彼は皇帝としての権力を利用し、ユンヌを自分のものにしようと画策しますが、その過程で、かつては慈愛に満ちていた彼の心は、次第に冷酷なものへと変貌を遂げていきます。
義務と欲望
一方、ブリタニクスは、ネロンとは対照的に、純粋で高潔な人物として描かれています。彼はユンヌへの愛と、皇帝の弟としての義務との間で葛藤を抱えます。ブリタニクスは、ネロンの仕打ちによって窮地に立たされながらも、その高潔さを失わず、愛と正義のために立ち上がろうとします。しかし、彼の行動は、ネロンの猜疑心をさらに煽り、悲劇的な結末へと繋がっていきます。
登場人物の心理描写
『ブリタニクス』は、登場人物たちの内面を綿密に描き出すことで、愛と権力、義務と欲望が人間の心にどのような影響を与えるのかを探求しています。特に、ネロンの心理描写は秀逸で、権力への執着によって、愛情が憎しみへと変貌していく様が生々しく描かれています。また、ユンヌとブリタニクスの純粋な愛は、ネロンの歪んだ愛情とは対照的に描かれ、作品に一層の深みを与えています。