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ラシーヌのブリタニクスの思想的背景

## ラシーヌのブリタニクスの思想的背景

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古代ローマへの関心と歴史的真実の追求

ラシーヌは古代ギリシャ・ローマ文化への造詣が深く、その悲劇作品においては、古代ギリシャ悲劇の影響を受けながらも、古代ローマ史を題材としたものが多く見られます。「ブリタニクス」も、ローマ帝国第4代皇帝クラウディウスの息子ブリタンニクスと、その後継者ネロの確執を描いた、タキトゥスの『年代記』やスエトニウスの『ローマ皇帝伝』といった歴史書に基づいています。

ラシーヌはこれらの史料を綿密に研究し、登場人物たちの性格や関係性、物語の展開を可能な限り忠実に再現しようと努めました。しかし、史実をそのまま舞台化するのではなく、劇的な効果を高めるために、登場人物の心理描写を深めたり、事件の順番を入れ替えたりするなど、独自の解釈や脚色を加えています。

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絶対王政下のフランス社会への反映

「ブリタニクス」が初演された17世紀フランスは、ルイ14世による絶対王政の時代でした。ラシーヌは、古代ローマ帝国の権力闘争を描きながらも、当時のフランス社会における権力構造や人間関係を暗に示唆しています。

例えば、暴君ネロの姿は、絶対的な権力を手にし、その力を振るうことで人々を恐怖に陥れる専制君主の姿と重なります。また、ネロを取り巻く佞臣たちの姿は、権力者に媚びへつらい、自身の保身のために暗躍する廷臣たちの姿を彷彿とさせます。

ラシーヌは、「ブリタニクス」を通じて、権力のもつ魔力と、それが人間にもたらす腐敗を鋭く描いています。

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