ラシーヌのフェードルの対極
ジャン＝ポール・サルトルの「出口なし」
「出口なし」は、実存主義哲学を扱った1944年の戯曲です。死後の3人の登場人物が、お互いの存在に苦しめられながら、セカンド・エンパイア様式の部屋に閉じ込められて永遠に存在するという物語です。
「フェードル」は、ギリシャ神話の登場人物に基づいた17世紀のフランス古典主義の悲劇です。義理の息子ヒッポリュトスへの抑圧された愛によって破滅へと導かれる、タイトルのクレタ島の王妃の物語です。
ジャン・ラシーヌの「フェードル」とジャン＝ポール・サルトルの「出口なし」という2つの戯曲は、テーマ、哲学的基盤、文体において対照的な関係にあります。
テーマ：運命と自由意志
「フェードル」は、人間の運命と、人間が自分の欲望や社会の期待にどのように縛られているかを扱っています。フェードルは、自分の行動を支配する不可避的な力として、自分の愛と運命の両方に翻弄されています。この劇は、運命と人間の行動の結果に焦点を当てています。
対照的に、「出口なし」は、人間の自由と個人の責任の概念を探求しています。登場人物は死んでおり、明らかな地獄にいますが、彼らの状況は彼ら自身の選択の結果です。サルトルの実存主義的見解は、人間は常に選択の自由を持っており、たとえ絶望的な状況であっても、自分の行動に責任があるというものです。
哲学的基盤：古典主義と実存主義
「フェードル」は、秩序、理性、明晰さを重視する文学運動である古典主義に根ざしています。この劇は、高貴な言語、登場人物の高貴な身分、運命という古典的な概念への準拠によって、これらの理想を体現しています。
一方、「出口なし」は、20世紀の実存主義哲学から生まれており、個人の自由、選択、存在の探求を強調しています。サルトルの劇は、人間の存在の本質についての従来の道徳と意味の欠如を強調する、不条理、絶望、人間の状況の無意味さを探求しています。
文体と構造：形式と非形式
「フェードル」は、アレクサンドラン詩句、厳格な構造、古典的な一体性に従うなど、古典的な悲劇の構造的慣習と文体を遵守しています。その洗練されたスタイルと焦点は、人間の感情の複雑さを高める秩序と明瞭さを反映しています。
対照的に、「出口なし」は、伝統的な演劇の形式を破ります。リアリズムを放棄し、登場人物は自分の考えや不確実性を明らかにする長い、しばしば支離滅裂な対話に従事しています。その非公式な言語、不穏な雰囲気、現実世界の慣習からの逸脱は、実存主義的世界観の不安定で不条理な性質を反映しています。
要約すると、ジャン・ラシーヌの「フェードル」とジャン＝ポール・サルトルの「出口なし」は、それぞれ古典主義と実存主義の文学的、哲学的運動を代表する、明確に対照的な戯曲です。運命対自由意志、人間の存在の本質、演劇の形式と文体の扱いにおける対照的なテーマ、哲学的基盤、文体的選択は、西洋文学における対照的なアイデアと芸術的表現の魅惑的な研究を提供しています。