## ラシーヌのフェードルから学ぶ時代性
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17世紀フランスの道徳観とフェードルの苦悩
ラシーヌの『フェードル』は、17世紀フランスの厳格な道徳観と、それに囚われた人間の苦悩を鮮やかに描き出しています。当時のフランスは、絶対王政の下、カトリック教会の影響力が強く、理性と秩序を重んじる古典主義の時代でした。恋愛においても、結婚という制度や社会的な立場が重視され、個人の感情は抑圧される傾向にありました。
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フェードルの禁断の恋と古典主義の悲劇
フェードルは、継息子イッポリットに禁断の恋を抱く悲劇のヒロインとして描かれています。彼女の恋は、血縁、社会的な立場、そして道徳観の全てに背くものであり、当時の社会では決して許されるものではありませんでした。フェードル自身も、自らの恋を「恥ずべき情熱」「恐ろしいまでの狂気」と認識し、理性と欲望の間で激しく葛藤します。
ラシーヌは、古典主義の三原則である「 bienséances ( bienséance の複数形、礼節)」、「vraisemblance (真実らしさ)」、「unité de temps, de lieu et d’action (時間の・場所の・ Handlungseinheit)」を遵守しながら、フェードルの苦悩を心理的に深く掘り下げることで、人間の持つ普遍的な愛と欲望、そして罪の意識を見事に表現しました。
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絶対王政との関連性
『フェードル』は、当時の絶対王政とも関連付けて解釈することができます。劇中でフェードルは、自らの情念を抑えきれずに破滅へと向かっていきますが、これは、理性を失った王が国を混乱に陥れるという、当時のフランス社会が抱えていた不安を象徴しているとも考えられます。
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現代社会への示唆
ラシーヌの『フェードル』は、17世紀フランスという時代背景を色濃く反映した作品ですが、同時に、人間の本質を見事に捉えた普遍的な作品でもあります。現代社会においても、私たちは様々な制約や道徳観の中で生きており、フェードルの苦悩は、現代社会を生きる私たちにも通じるものがあるのではないでしょうか。