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ラシーヌ「ブリタニクス」の形式と構造

ラシーヌ「ブリタニクス」の形式と構造

ジャン・ラシーヌの戯曲「ブリタニクス」の基本構成

ジャン・ラシーヌの「ブリタニクス」は、1669年に初演された古典悲劇であり、フランス古典主義の厳格な規則に従って書かれています。この作品は、五幕から成り、アレクサンドリアの十二音節詩(アレクサンドラン)で書かれており、一つの場所で一日のうちに起こる出来事を描いています。これは、アリストテレスの三一致の原則(時間、場所、行動の統一)に沿った形式です。

登場人物と葛藤の展開

「ブリタニクス」では、主要な登場人物が限られており、その中でもネロ、アグリッピナ、ブリタニクス、ジュニア、そしてポッパエアが中心となる。ラシーヌは、登場人物たちの内面的葛藤や道徳的ジレンマを深く掘り下げることで、観客の感情に訴えかけます。劇の進行は、ネロの暴政と彼の母アグリッピナとの関係、そしてブリタニクスとポッパエアの愛情の三角関係に焦点を当てています。

詩的な言語と象徴

ラシーヌは、言語を効果的に使うことで情緒的な強度を増し、登場人物の心理状態を繊細に表現しています。アレクサンドランは、そのリズミカルな響きと厳格な形式によって、登場人物たちの高貴さや悲劇的な運命を強調しています。また、対話においては、象徴的な意味を持つ言葉やフレーズを用いることで、テーマや登場人物の感情の変化を際立たせています。

構造上の特徴とその効果

各幕は、緊張の高まりとクライマックスへの構造を持ち、最終幕での突然の解決によって観客に強い印象を与えます。ラシーヌの劇では、幕間の緊張感の調整が巧みであり、観客の期待を高めつつも、最終的な結末へとスムーズに導いています。また、劇中の登場人物たちは互いに密接に関連しており、それぞれの行動が他の登場人物に影響を与えることで、全体としての一貫性と密度を保っています。

ラシーヌの「ブリタニクス」は、形式面でも内容面でも、フランス古典悲劇の傑作として評価されています。その厳格な構造と詩的な表現は、後の戯曲に多大な影響を与えたことは言うまでもありません。

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