## ユスティニアヌスのローマ法大全の普遍性
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ローマ法の再編と「ローマ法大全」の成立
6世紀、東ローマ帝国皇帝ユスティニアヌス1世は、かつてのローマ帝国の栄光を復興しようと壮大な計画に着手しました。その中でも重要な事業の一つが、膨大かつ複雑化したローマ法の再編でした。
ユスティニアヌスは、トリボニアヌスを筆頭とする法学者委員会を組織し、古典期の法学者による学説や勅法などを収集・整理させ、矛盾点を解消した上で体系的に編纂させました。こうして529年から534年にかけて成立したのが、「ローマ法大全(Corpus Iuris Civilis)」です。
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「ローマ法大全」の内容と構成
「ローマ法大全」は、以下の4つの部分から構成されています。
* **「学説彙纂」(Institutiones)**: 法学入門書として、ガイウスの「Institutiones」を基に編纂された。
* **「勅法彙纂」(Digesta)**: ウルピヌス、パピニアーヌスなど、古典期の著名な法学者39名の著作から、約9,200の抜粋をテーマ別に50巻にまとめたもの。
* **「新勅法集」(Codex)**: ユスティニアヌス以前の皇帝の勅法を年代順にまとめたもの。
* **「新法」(Novellae Constitutiones)**: ユスティニアヌスが制定した新しい勅法を集めたもの。
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「ローマ法大全」の普遍性を支えた要素
「ローマ法大全」は、単なる法典ではなく、ローマ法の伝統と理念を具現化したものでした。その普遍性を支えた要素としては、以下の点が挙げられます。
* **ローマ法の理念:** 「ローマ法大全」は、自然法、理性、正義、衡平といったローマ法の基本理念を継承しており、時代や地域を超えて人々に受け入れられる普遍性を備えていました。
* **体系性と網羅性:** 「ローマ法大全」は、ローマ法の膨大な内容を体系的かつ網羅的に整理しており、様々な法的問題に対応できる包括性を備えていました。
* **実用性:** 「ローマ法大全」は、抽象的な理論だけでなく、具体的な事例や判例を豊富に含んでおり、実務に役立つ実践的な法典として機能しました。
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「ローマ法大全」の受容と影響
「ローマ法大全」は、東ローマ帝国ではその後900年以上にわたって法的基盤として用いられました。また、西ヨーロッパ世界では11世紀以降に「ローマ法大全」が「再発見」され、大学における法学教育の中心となり、中世・近世ヨーロッパの法発展に多大な影響を与えました。