モームの月と六ペンスの評価
### 作品概要
『月と六ペンス』は、イギリスの作家サマセット・モームによって書かれ、1919年に発表された小説です。この作品は、妻と子を捨て、画家になることを決意した株式仲買人チャールズ・ストリックランドの半生を描いています。ストリックランドはゴーギャンの生涯から着想を得たと言われています。
### 評価ポイント
『月と六ペンス』は、モームの代表作の一つとして、出版以来多くの読者を引きつけてきました。その評価ポイントは以下の点が挙げられます。
* **芸術と人生の対比**: 作品は、社会的な安定や物質的な豊かさよりも芸術を追求することを選択したストリックランドの姿を通して、芸術と人生の対比を描いています。ストリックランドの強烈な個性と、彼を取り巻く人々の葛藤は、読者に「人生の意味とは何か」「本当の幸福とは何か」といった根源的な問いを投げかけます。
* **人間性の洞察**: モームは、ストリックランドや彼を取り巻く様々な人物を描き出すことで、人間の本質に迫ります。ストリックランドの才能に惹かれながらも、彼の非情さに苦悩する人々の姿は、人間関係の複雑さを浮き彫りにします。
* **美しい文章**: モームは、鋭い観察眼と洗練された筆致で、人間の心理や情景を鮮やかに描写しています。作品全体に漂う、どこか冷めたような視線と、時折見せる叙情的な表現が、独特の雰囲気を醸し出しています。
### 批判的な意見
一方で、以下のような批判的な意見も存在します。
* **ストリックランド像への疑問**: ストリックランドは、芸術のためには周囲の人間を顧みない、非情で自己中心的な人物として描かれています。彼の生き方を肯定的に捉えるか、それとも批判的に捉えるかは、読者によって意見が分かれます。
* **女性の描かれ方**: 作品に登場する女性は、ストリックランドの芸術の影に隠れてしまっている、あるいはステレオタイプ的な描かれ方をしているという指摘があります。
* **西洋中心主義**: ストリックランドが最終的にたどり着くタヒチは、西洋人にとっての「楽園」として描かれており、当時の植民地主義的な視点を反映しているという見方もあります。