# モーパッサンのベラミを深く理解するための背景知識
第三共和政期のフランス社会
「ベラミ」は、1885年に発表されたギ・ド・モーパッサンの長編小説です。物語の舞台は1880年代のパリであり、フランス第三共和政の時代背景を理解することは、作品を深く理解する上で非常に重要です。第三共和政は、1870年の普仏戦争での敗北と第二帝政の崩壊後に成立しました。この時期のフランスは、政治的な不安定さと社会的な変革が同時に進行していました。
ジャーナリズムの影響力
「ベラミ」の主人公ジョルジュ・デュロワは、地方出身の退役軍人で、パリに出てきてジャーナリズムの世界でのし上がっていきます。当時のフランスでは、新聞などのジャーナリズムの影響力が急速に増大していました。新聞は世論形成に大きな役割を果たし、政治や社会に対して強い影響力を持つようになりました。デュロワは、そのジャーナリズムの力を利用して、自らの野心を満たしていくのです。
植民地主義と帝国主義
第三共和政期のフランスは、積極的に植民地政策を推し進めていました。アフリカやアジアへの進出は、フランスの国威発揚と経済的な利益をもたらすと考えられていました。小説の中でも、フランスの植民地政策に関する記述が登場し、当時のフランス社会における帝国主義的な風潮が反映されています。デュロワは、ジャーナリストとしてモロッコへの軍事介入を扇動する記事を執筆し、その功績によって社会的地位を高めていきます。
ブルジョワジーの台頭と腐敗
第三共和政期には、産業革命の影響でブルジョワジーと呼ばれる資本家階級が台頭しました。彼らは経済的な力を背景に、政治や社会にも大きな影響力を持つようになりました。しかし、その一方で、ブルジョワジーの間では、金銭欲や権力欲に駆られた腐敗した道徳観が広がっていました。「ベラミ」では、当時のブルジョワジーの生活や道徳観がリアルに描かれており、デュロワは彼らの弱みにつけ込んで出世していきます。
女性の社会的地位
19世紀後半のフランスでは、女性の社会的地位は依然として低いものでした。女性は男性に従属的な存在とみなされ、教育や職業の機会も限られていました。しかし、一方で、女性の権利を主張する運動も徐々に広がりつつありました。「ベラミ」では、さまざまなタイプの女性が登場し、当時の女性の社会的な立場や生き方が描かれています。デュロワは、女性たちを巧みに利用して出世していきますが、同時に、彼自身も女性たちに翻弄される場面も描かれています。
自然主義文学
「ベラミ」は、自然主義文学の代表的な作品の一つとして知られています。自然主義文学は、人間の行動や心理を、遺伝や環境などの科学的な視点から客観的に描写することを目指した文学運動です。モーパッサンは、自然主義文学の旗手エミール・ゾラの影響を受け、「ベラミ」においても、当時の社会や人間の姿を冷徹な筆致で描き出しています。
これらの背景知識を踏まえることで、「ベラミ」という作品をより深く理解し、当時のフランス社会や人間の姿を多角的に捉えることができるでしょう。
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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。