モンゴメリの赤毛のアンから学ぶ時代性
1. 女性の立場と教育
モンゴメリが「赤毛のアン」を執筆した19世紀後半から20世紀初頭にかけてのカナダは、ヴィクトリア朝時代の価値観が色濃く残る時代でした。女性の役割は家庭にあり、結婚して良妻賢母となることが当然とされていました。アンが通うエイヴォンリー校でも、女子生徒たちは将来は教師か主婦になることを期待されています。
しかし、アンは「想像力」と「知性」を武器に、こうした固定観念にとらわれない生き方を模索していきます。教師になるという夢に向かって努力し、大学進学を希望する姿は、当時の女性にとって決して当たり前ではありませんでした。アンの物語は、女性の社会進出と教育の重要性が叫ばれ始めた時代の変化を反映しています。
2. 孤児と社会福祉
アンは孤児院で育ち、幼い頃から愛情に飢えていました。当時の孤児院は、必ずしも子供たちにとって優しい場所ではなく、厳しい規則や労働が課せられることも少なくありませんでした。アン自身も、プライドを傷つけられたり、理不尽な扱いを受けたりする経験をしています。
マシューとマリラのカスバート兄妹は、そんなアンを温かく迎え入れ、愛情深く育てます。しかし、周囲の人々の中には、孤児に対する偏見や差別的な視線を持つ者もいました。アンが直面する困難は、当時の社会福祉の未熟さや、社会的弱者に対する偏見を浮き彫りにしています。
3. 自然と想像力
アンの物語は、プリンスエドワード島の美しい自然描写に彩られています。アンは豊かな自然の中で遊び、空想を膨らませることで、辛い現実を乗り越えようとしています。
当時のカナダでは、産業革命の影響で都市部への人口集中が進み、自然環境は変化しつつありました。アンの自然に対する愛情は、失われつつある自然の大切さ、そして自然と人間の共存について改めて考えさせるメッセージを含んでいます。また、想像力はアンにとって、厳しい現実を生き抜くための力であり、同時に彼女自身を表現する手段でもありました。