モンゴメリのアンの愛情が扱う社会問題
孤児、および社会的弱者への偏見
アンは孤児院育ちという出自を持ち、そのために里親探しの際にも偏見や差別を受けます。特に、マシューとマリラの兄妹が「男の子」を希望していたことが、アンにとって最初の試練となりました。これは当時の社会において、農作業や力仕事を担う「役に立つ存在」としては、男の子がより求められていたことを示唆しています。また、アンの空想癖や、おしゃべり好きといった個性も、当時の厳格な社会規範から逸脱していると見なされ、周囲の大人たちから矯正されそうになります。このように、アンを取り巻く環境は、当時の社会における孤児、そして型破りな子供に対する厳しい現実を浮き彫りにしています。
女性の社会進出の困難さ
アンは聡明で学ぶことに喜びを感じる少女として描かれていますが、当時の社会では、女性の進路は限られていました。教師になるという道を選んだアンでしたが、それも決して容易な道のりではありませんでした。当時の女性たちは、結婚して家庭に入るという道が一般的であり、知的探求心を持つアンのような存在はむしろ異端とみなされることもありました。アンの親友であるダイアナは、裕福な家庭に生まれながらも、当時の社会規範に縛られ、自分の夢を諦めざるを得ない立場に置かれています。アンとダイアナの関係を通して、モンゴメリは、女性が社会的に自己実現することがいかに困難であったかを描き出しています。
貧富の格差
アンの物語は、当時のカナダ社会における貧富の格差も浮き彫りにしています。アン自身、孤児院という貧しい環境で育ち、物質的な豊かさとは無縁の生活を送ってきました。一方で、バリー一家のように裕福な家庭で育つ子供たちは、何不自由ない暮らしを送り、高い教育を受ける機会にも恵まれています。アンの親友であるダイアナとの友情を通して、こうした社会的な格差が浮き彫りになります。また、アンが教師になった後も、貧しい家庭の子供たちの境遇を目の当たりにする場面があり、教育の機会均等といった問題にも意識が向けられます。