モリエールの人間嫌いの周辺
モリエールの生涯と作品概要
モリエール(1622-1673)は、本名をジャン=バティスト・ポクランといい、フランスの劇作家、俳優、演出家です。17世紀フランスを代表する古典主義の劇作家として知られています。
モリエールは裕福な家庭に生まれ、法律を学びましたが、演劇の世界に魅了され、21歳の時に劇団を旗揚げしました。その後、約13年間、地方を巡業した後、パリに戻り、ルイ14世の庇護を受けて劇作家としての地位を確立しました。
彼の作品は、風刺と笑いを特徴とし、当時の社会や人間性を鋭く批判しました。代表作には、「タルチュフ」、「ドン・ジュアン」、「人間嫌い」、「女房学校」、「守銭奴」などがあります。
「人間嫌い」の概要
「人間嫌い」は、1666年に発表された5幕構成の韻文喜劇です。原題は “Le Misanthrope ou l’Atrabilaire amoureux” (人間嫌いまたは恋する憂鬱質)で、人間嫌いの主人公アルセストと、社交界の花形セリメーヌの恋愛模様を中心に物語が展開します。
アルセストは、人間の偽善や欺瞞を嫌い、正直で率直な生き方を貫こうとします。しかし、皮肉なことに、彼が愛するセリメーヌは、社交界に身を置き、男たちに取り入ることで自分の立場を有利にしようとする女性でした。
アルセストは、セリメーヌの軽薄な行動に苦悩しながらも、彼女の心を手に入れようとしますが、最終的に、セリメーヌはアルセストのもとを去り、彼は人間社会に絶望して隠遁することを決意します。
「人間嫌い」における人間嫌いの表現
「人間嫌い」では、主人公アルセストの強烈な人間嫌いの言葉が印象的に描かれています。彼は、社交界の人々のうわべだけの付き合い、お世辞、陰口、裏切りなどに嫌悪感を抱き、正直で率直な言動を貫こうとします。
しかし、彼の正直すぎる言葉は、周囲の人々を傷つけ、反感を買うことになります。アルセストの言動は、人間社会で生きていくことの難しさ、本音と建前の間で揺れ動く人間の姿を浮き彫りにしています。
「人間嫌い」の解釈
「人間嫌い」は、単なる人間嫌いを描いた作品ではなく、人間の本質や社会の矛盾を鋭く風刺した作品として解釈されています。
アルセストは、理想主義者であり、純粋さを求めるあまり、現実の社会に適応することができません。彼の姿は、人間社会における理想と現実のギャップ、妥協の難しさを象徴しているとも言えます。
また、「人間嫌い」は、恋愛喜劇の要素も含んでおり、アルセストとセリメーヌの恋愛模様を通して、男女の恋愛観の違い、恋愛と結婚の難しさなども描かれています。