## モリエールのタルチュフの力
タルチュフの偽善の力
タルチュフは、表向きは敬虔な信者として振る舞いながら、裏では欲望に忠実な偽善者です。彼の巧妙な言葉遣いと立ち居振る舞いは、オルゴンをはじめとする人々を欺き、絶対的な信頼を得るための強力な武器となります。
タルチュフは聖書の言葉を都合よく解釈し、自分の欲望を正当化します。例えば、エルミールを誘惑する際には、神の名のもとに彼女の罪の意識を和らげようとします。また、オルゴンに対しては、自分の行いを神の意志だと信じ込ませ、財産を譲渡させることまで成功します。
社会風刺の力
モリエールは「タルチュフ」を通して、当時のフランス社会に蔓延していた偽善や宗教的欺瞞を痛烈に批判しています。 特に、上流階級の人々が、盲目的に宗教的権威に傾倒する様子を、オルゴン一家を通して滑稽に描いています。
オルゴンは、タルチュフの巧みな話術に騙され、家族の言葉にも耳を貸さなくなります。彼の盲信ぶりは、当時の宗教界における権力構造や、人々の信仰心の在り方に対するモリエールの批判を象徴しています。
喜劇としての力
「タルチュフ」は、その深刻なテーマにもかかわらず、登場人物たちの滑稽な言動や状況によって、観客を笑いに誘う喜劇でもあります。
例えば、オルゴンがテーブルの下に隠れ、タルチュフがエルミールに言い寄る場面は、その滑稽さによって、タルチュフの偽善性をより際立たせています。また、登場人物たちの誇張された性格描写や、テンポの良いセリフの応酬は、作品に軽快さをもたらし、観客を飽きさせません。