## モリエールのタルチュフの光と影
###
光
* **喜劇としての面白さ:**タルチュフは登場人物たちの滑稽な行動や風刺の効いたセリフによって、観客を笑いに誘う喜劇です。特に、偽善者タルチュフの言動と、オルゴン家の盲信ぶりは、その対比も相まって大きな笑いを生み出します。
* **社会風刺の鋭さ:**モリエールは、当時のフランス社会に蔓延していた宗教的偽善をタルチュフという人物像に集約して痛烈に批判しています。彼の作品は、単なる娯楽作品ではなく、社会に警鐘を鳴らすという重要な役割も担っていました。
* **人間心理の描写:**タルチュフだけでなく、オルゴンや他の登場人物たちも、それぞれの人間的な弱さや欲望を抱えています。モリエールは、彼らの心理を巧みに描写することで、作品に深みを与えています。
###
影
* **宗教批判の過激さ:**タルチュフは、その内容の過激さから、当時の宗教界から激しい非難を浴びました。モリエールは、作品の上演禁止などの弾圧を受けながらも、表現の自由のために戦い続けました。
* **登場人物の類型性:**登場人物の一部、特にタルチュフやオルゴンは、類型的な性格付けがされており、心理描写の深さという点ではやや物足りなさを感じさせる部分もあります。
* **結末の唐突さ:**タルチュフの悪事が露見し、オルゴン家が窮地を脱する結末は、当時の演劇の慣習に従ったdeus ex machina(神の介入)的な要素が強く、やや唐突な印象を与えます。
これらの光と影の両面が、タルチュフを時代を超えて愛される作品たらしめていると言えるでしょう。