メンガーの国民経済学原理の関連著作
カール・メンガーの「国民経済学原理」とその関連著作
カール・メンガーの主著『国民経済学原理』(1871年)は、ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ、レオン・ワルラスと並んで、経済学における限界革命の中心的な著作とされています。これらの経済学者は、それぞれ独立に、価値の限界効用理論を発展させました。これは、財やサービスの価値はその財やサービスの追加的な単位から得られる満足、すなわち限界効用によって決定されるというものです。
メンガーの著作と関連する歴史的名著
メンガーの『国民経済学原理』とその限界効用理論は、後の経済学に多大な影響を与え、数多くの重要な著作を生み出す土壌となりました。以下に、その中でも特に関連の深い歴史的名著をいくつか紹介します。
オイゲン・フォン・ベーム=バヴェルク「資本及び資本利子論」
メンガーの弟子であったオイゲン・フォン・ベーム=バヴェルクは、『資本及び資本利子論』(1884年)を著し、資本と利子の理論に限界効用理論を適用しました。ベーム=バヴェルクは、資本財の価値は将来の消費財を生み出す力、すなわち「迂回生産」の価値によって決まると論じました。また、利子は人々が現在の消費よりも将来の消費を好む時間選好から生じると説明しました。
フリードリヒ・フォン・ヴィーザー「社会経済学の基礎理論」
もう一人のメンガーの弟子であるフリードリヒ・フォン・ヴィーザーは、『社会経済学の基礎理論』(1905年)において、経済学全体を限界効用の概念に基づいて再構成しようと試みました。ヴィーザーは、経済現象はすべて個人間の限界効用の交換によって説明できると主張し、「帰属論」と呼ばれる独自の価値論を展開しました。
ルートヴィッヒ・フォン・ミーゼス「人間の行動」
オーストリア学派の経済学者ルートヴィッヒ・フォン・ミーゼスは、『人間の行動』(1949年)において、メンガーの限界効用理論を発展させ、経済学全体を「プラクセオロジー」、すなわち人間の行動の論理学として再構築しようとしました。ミーゼスは、人間の行動はすべて目的論的であり、価値は主観的なものであるという前提から出発し、市場経済の優位性や社会主義の不可能性などを論じました。
これらの著作は、メンガーの『国民経済学原理』が限界革命の火付け役となり、その後の経済学、特にオーストリア学派と呼ばれる学派の発展に大きな影響を与えたことを示しています。これらの著作は、価値の主観性、限界効用の重要性、市場メカニズムの分析など、現代経済学においても重要な概念を提供しています。