## メンガーの国民経済学原理から得られるもの
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経済現象に対する主観的価値の重要性の理解
メンガーの『国民経済学原理』は、経済学における「限界革命」の先駆けとなった書物として知られています。本書においてメンガーは、財の価値は客観的な要素ではなく、個人の主観的な評価によって決定されると主張しました。これは、当時の主流派経済学であった古典派経済学が、財の価値は生産に要した労働量によって決まるとする「労働価値説」を唱えていたことと対峙するものでした。
メンガーは、人々が財に価値を感じる理由は、その財がニーズを満たし、満足度(効用)をもたらすと感じるからだと説明しました。そして、同じ種類の財であっても、その人がすでにどれだけの量を保有しているかによって、追加的に得られる満足度(限界効用)は変化すると指摘しました。 これは、水がダイヤモンドよりも生命維持に不可欠であるにもかかわらず、ダイヤモンドの方が高価であるという「価値の逆転現象」を説明する上で重要な概念となります。
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経済分析における方法論的個人主義の重要性の理解
メンガーは、経済現象を理解するためには、個人に焦点を当てた分析を行うべきだと主張しました。これは、「方法論的個人主義」と呼ばれる立場であり、社会や集団全体をひとまとめに扱うのではなく、個々の主体の行動とその相互作用から経済現象を解明しようとするものです。
彼は、財の価値や価格、生産、分配といった経済現象は、すべて個人の選択と行動の結果として生み出されると考えました。 このようなミクロレベルでの分析は、後の経済学、特にミクロ経済学の発展に大きな影響を与えました。
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経済理論における論理的一貫性の重要性の認識
メンガーは、経済学が厳密な論理に基づいた科学であるべきだと考え、『国民経済学原理』においても明快で論理的な構成を重視しました。彼は、主観的価値論を基礎として、貨幣の発生、価格形成、交換、資本と利子といった経済現象を体系的に説明しようと試みました。
これは、観察や経験に基づく帰納的な方法ではなく、少数の公理から出発して論理的な推論によって理論を構築する演繹的な方法を重視したと言えます。 このようなメンガーの姿勢は、後の経済学における理論構築に大きな影響を与えました。
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