メルヴィルの白鯨の発想
メルヴィルの捕鯨経験
メルヴィルは1841年、22歳の時に捕鯨船アキュシュネット号に乗り込み、南太平洋で1年半を過ごしました。この経験は「白鯨」に大きな影響を与えており、作中の多くの描写はメルヴィルの実体験に基づいています。例えば、捕鯨の描写や、船上での生活、船員たちの会話などは、メルヴィル自身の経験が色濃く反映されています。
当時の捕鯨事情
19世紀半ば、アメリカは捕鯨ブームの真っ只中にありました。鯨油は灯油や潤滑油として需要が高く、多くの若者が一攫千金を夢見て捕鯨船に乗り込んでいました。メルヴィルもそうした若者の一人でしたが、当時の捕鯨は非常に危険な仕事であり、多くの船乗りが命を落としていました。「白鯨」には、そうした捕鯨の現実がリアルに描かれています。
モビー・ディック号の悲劇
1820年、エセックス号という捕鯨船が巨大なマッコウクジラに襲われ沈没するという事件が起こりました。この事件は当時大きな話題となり、メルヴィルもこの事件について知っていました。「白鯨」のストーリーはこのエセックス号の悲劇を参考にしていると考えられています。
ナサニエル・ホーソーンの影響
メルヴィルは「緋文字」などで知られる作家ナサニエル・ホーソーンと親交があり、彼の作品から大きな影響を受けていました。ホーソーンの作品には、人間の罪や悪、復讐といったテーマが描かれることが多く、そうしたテーマは「白鯨」にも通底しています。