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メルヴィルの白鯨の技法

## メルヴィルの白鯨の技法

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語り口

「白鯨」は、物語の大部分を占める一人称視点の語り手、イシュメールによって語られます。イシュメールの語り口は、教養豊かで多弁、時にユーモラスで、時に哲学的な深みに満ちています。彼は物語の語り手であると同時に、登場人物の一人でもあり、読者は彼の主観を通して物語を体験します。

イシュメールの語り口の特徴の一つに、物語の進行を中断して、捕鯨に関する詳細な説明や、鯨に関する学術的な考察、聖書の引用などを挿入する傾向があります。これらの挿入は、一見すると物語の本筋から脱線しているように見えるかもしれませんが、作品全体に独特のリズムと深みを与え、イシュメールの博識さを印象付ける役割を果たしています。

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象徴主義

メルヴィルは「白鯨」において、象徴主義を効果的に用いています。白鯨モビー・ディックは、単なる巨大な鯨ではなく、自然の力、悪、人間の傲慢さなど、様々な解釈が可能な象徴として描かれています。エイハブ船長自身も、復讐に取り憑かれた人間の執念を象徴しています。

その他にも、ピークォド号は人間社会の縮図、海は未知の世界、鯨油は人間の欲望などを象徴していると解釈されています。これらの象徴は、作品に多層的な意味を与え、読者に深い思考を促します。

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複数の文体の使用

「白鯨」は、単一の文体に固執することなく、多様な文体を駆使している点も特徴です。叙事詩的な描写、演劇的な対話、哲学的な考察、聖書的な文語などが、物語の中で巧みに織り交ぜられています。

例えば、嵐の場面では、自然の脅威を表現するために、詩的で力強い文体が用いられます。一方、エイハブ船長とスターバック一等航海士の会話では、対照的な二人の性格を際立たせるために、緊迫感のある劇的な文体が採用されています。このように、メルヴィルは場面や登場人物に応じて文体を使い分けることで、作品に変化と深みを与えています。

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