メルヴィルの白鯨が関係する学問
文学
「白鯨」は、その多層的な物語構成、複雑な登場人物、壮大なテーマ、詩的な言語など、文学的に高く評価されています。
特に、象徴主義、寓意、神話などの文学的手法を駆使し、人間の欲望、復讐、自然との関係といった普遍的なテーマを探求している点が挙げられます。
また、聖書やシェイクスピア作品からの引用、典故を豊富に含み、西洋文学の伝統に深く根ざした作品とも言えます。
歴史
「白鯨」は、19世紀のアメリカ捕鯨時代の歴史を鮮やかに描き出しています。
メルヴィル自身が船乗りとしての経験を持ち、当時の捕鯨の現実を作品に反映させています。
捕鯨船の構造や航海術、捕鯨の過程などの描写は詳細かつ正確で、貴重な歴史的資料としての価値も認められています。
また、奴隷制や帝国主義など、当時のアメリカの社会問題を背景に、人間の欲望や暴力性を描いている点も歴史的に考察する上で重要です。
心理学
「白鯨」は、人間の深層心理を探求する作品としても解釈されています。
特に、主人公エイハブ船長の狂気じみた復讐心は、人間の心の闇や執着心の恐ろしさを象徴するものとして、心理学的な観点から分析されています。
また、エイハブと対照的な存在として描かれる一等航海士スターバックの理性的な思考や、他の船員たちの心理描写を通して、人間の心理的多様性を浮かび上がらせています。
哲学
「白鯨」は、善悪、運命、自由意志、自然と人間の関係など、哲学的なテーマを扱った作品としても読み解くことができます。
白鯨は、自然の圧倒的な力や不可知なるものの象徴として解釈され、人間存在の小ささや限界を突きつけています。
また、エイハブの復讐心と、それに翻弄される船員たちの運命を通して、人間の自由意志や道徳、倫理といった問題を提起しています。
海洋生物学
「白鯨」は、クジラに関する詳細な描写が特徴的で、海洋生物学の観点からも注目されています。
メルヴィルは、当時の最新の科学的知見を取り入れながら、マッコウクジラの生態や行動をリアルに描いています。
また、作中には様々な海洋生物が登場し、19世紀の海洋生物学の知識の一端を垣間見ることができます。