メルヴィルのビリー・バッドを読む
善と悪
「ビリー・バッド」は、善良で無垢な船乗りであるビリー・バッドと、悪の化身であるジョン・クラッガートの対比を描いた作品です。ビリーは肉体的にも精神的にも美しい青年であり、周囲の人々に愛されています。一方クラッガートは、ビリーの善良さを憎み、彼を破滅させようと企む邪悪な男です。この物語は、善と悪の対立、そして人間の心の奥底に潜む闇を探求しています。
正義と法律
「ビリー・バッド」のもう一つの重要なテーマは、正義と法律の対立です。ビリーがクラッガートを殺害した後、船長のヴィアは、ビリーが正当防衛で殺人を犯したことを知っています。しかしヴィアは、当時の海軍法に従えば、ビリーを死刑に処さなければならないことも理解しています。ヴィアは苦悩の末、法に従うことを選び、ビリーは絞首刑になります。この物語は、正義と法律が必ずしも一致するとは限らないこと、そして厳しい選択を迫られた人間の苦悩を描いています。
海と船
「ビリー・バッド」の舞台となるのは、18世紀後半のイギリス海軍の軍艦「ベレロフォン」です。メルヴィルは、船上での生活や船員たちの心理を詳細に描写しています。閉鎖された空間である船は、人間の心の闇を増幅させ、善と悪の対立をより鮮明にします。また、広大で容赦のない海は、人間の小ささと無力さを象徴しています。