## メリアムの政治権力から学ぶ時代性
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権力概念の変遷
ロバート・ダールに代表される政治学における行動主義の隆盛は、政治現象を「誰が、誰に、どのような影響を与えるか」という観点から、実証主義的な手法によって解明しようとするものでした。しかし、このような行動主義的な権力観に対して、1960年代以降、様々な批判が噴出します。その中心にいたのが、アメリカの政治学者ハロルド・D・ラズウェルとチャールズ・E・メリアムの系譜に連なるシカゴ学派の伝統を受け継いだ、チャールズ・E・メリアムの弟子であるハーバート・サイモンやデイヴィッド・イーストン、そしてメリアムの著作を編纂したネルソン・W・ポルズビーなどでした。
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メリアムの視点:権力は遍在する
メリアムは、権力を「人間間の関係において、他の人間の行動を自分の意志に従って方向付けること」と定義し、政治を「社会における権力の配分と行使」と捉えました。メリアムは、権力が政治のあらゆる局面に浸透しており、単に行動に影響を与えるだけでなく、人々の思考や感情、さらには社会構造や制度そのものを形作ると考えました。これは、従来の政治学が重視してきた、議会や政党、選挙といった「フォーマルな政治」だけでなく、家族、学校、職場といった「インフォーマルな政治」にも権力が存在することを示唆しています。
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時代背景:大衆社会の出現と権力の変化
メリアムの権力観は、20世紀初頭のアメリカ社会における変化、特に大衆社会の出現を背景にしています。工業化や都市化の進展に伴い、人々の生活は大きく変化し、マスメディアの発達や大衆組織の台頭によって、従来のエリート層だけでなく、一般大衆も政治に参加するようになりました。このような状況下では、従来型の政治制度や権力構造だけでは、複雑化する社会を統治することが困難になっていました。メリアムは、このような時代の変化を鋭く捉え、従来の政治学の枠組みを超えて、社会のあらゆる領域に存在する権力を分析する必要性を訴えたのです。
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現代社会への示唆:権力の可視化と新たな統治
メリアムの権力論は、現代社会においても重要な示唆を与えてくれます。グローバル化や情報化の進展によって、社会はますます複雑化し、権力の形態も多様化しています。従来型の政治制度や権力構造は、もはや有効に機能せず、新たな統治のあり方が求められています。メリアムの権力論は、このような現代社会の課題を理解する上で重要な視点を提供してくれるでしょう。