## ミルトンの復楽園に匹敵する本
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叙事詩の巨匠、ダンテ「神曲」
ミルトンが「失楽園」で描いたのは、アダムとイブの楽園追放と人類の堕落というキリスト教の根幹に触れる物語でした。「神曲」もまた、キリスト教世界における死後の世界、地獄、煉獄、そして天国を旅するダンテ自身の魂の救贖の物語という壮大なテーマを扱っています。
「神曲」は14世紀初頭に書かれた作品であり、中世イタリア語で書かれた最初の長編叙事詩として、イタリア文学の礎を築いただけでなく、西洋文学全体に多大なる影響を与えました。「失楽園」と同様に、「神曲」もまた、聖書や古典文学、そして当時の哲学や神学など、幅広い知識を背景に、複雑な寓意と象徴に満ちた作品世界を構築しています。
ダンテが旅する三つの世界、地獄、煉獄、天国は、それぞれ緻密に構成され、罪とその罰、そして魂の浄化と救済が鮮やかに描き出されています。読者はダンテと共に、罪深き魂が苦しむ地獄の業火を目の当たりにし、懺悔の涙に濡れる煉獄の道を登り、神の存在に満たされる天国の光輝に包まれるという、壮絶な魂の遍歴を体験することになります。
「失楽園」が人間の堕落という悲劇を描いているのに対し、「神曲」は絶望の淵から神の愛へと至る希望に満ちた物語として、対照的な魅力を持っています。しかし、どちらも人間存在の本質、善と悪、罪と罰、そして救済といった普遍的なテーマを扱っており、時代を超えて読み継がれる不朽の古典として、今なお多くの読者を魅了し続けています。