ミルトンの失楽園を読む前に
ミルトンの人生の背景
ジョン・ミルトン(1608-1674)は、イギリスの詩人、パンフレット作者、公務員でした。「失楽園」は、彼の最も有名な作品であり、1667年に出版されました。「失楽園」は、アダムとイブの物語を、サタンの視点も交えて描いた壮大な叙事詩です。
ミルトンは、イギリス史上、最も激動の時代を生きました。彼は、チャールズ1世の処刑とイギリス共和国(1649-1660)の樹立を目の当たりにしました。ミルトン自身も、オリバー・クロムウェル政権下でラテン語秘書官を務めました。しかし、王政復古後、ミルトンは投獄され、失明しました。
聖書の理解を深める
「失楽園」は、創世記の物語に基づいています。特に、アダムとイブの創造、エデンの園での生活、蛇による誘惑、禁断の果実を食べたことによる楽園からの追放が描かれています。作品をより深く理解するためには、これらの聖書のエピソードについて知っておくことが不可欠です。
叙事詩の形式に慣れる
「失楽園」は、空白詩(韻律のない五歩格)で書かれた叙事詩です。叙事詩は、英雄、神々、歴史上の出来事を描いた長編詩です。ミルトンは、古典的な叙事詩の伝統を踏まえながら、独自のスタイルを確立しました。
叙事詩には、いくつかの特徴があります。
* **壮大なテーマ**: 叙事詩は、人類全体に関わるような壮大なテーマを扱います。「失楽園」では、善と悪、自由意志と運命、罪と贖罪といったテーマが描かれています。
* **英雄的な登場人物**: 叙事詩には、英雄や神々といった、人間離れした能力や資質を持った登場人物が登場します。「失楽園」では、サタン、アダム、イブ、神などが登場します。
* **壮大な場面設定**: 叙事詩は、天国、地獄、エデンの園といった、現実を超えた壮大な場面設定がなされます。
* **高尚な文体**: 叙事詩は、高尚な文体で書かれます。ミルトンの「失楽園」も、ラテン語やギリシャ語からの借用語を多く含んだ、難解な文体で書かれています。
17世紀のイギリスの社会背景
「失楽園」は、17世紀のイギリスの社会や文化を反映した作品でもあります。当時のイギリスは、宗教改革、ルネサンス、科学革命といった大きな変革期にありました。ミルトン自身も、これらの出来事に深く関わっていました。
忍耐強く、辞書を片手に
「失楽園」は、決して読みやすい作品ではありません。難解な語彙、複雑な文構造、膨大な量の情報など、読者を悩ませる要素がたくさんあります。しかし、忍耐強く読み進め、必要であれば辞書や注釈書を参考にしながら、作品世界に没頭することで、ミルトンの偉大さに触れることができるはずです。