## ミルトンの失楽園を読む
ミルトンの描く壮大な叙事詩
ジョン・ミルトン作「失楽園」は、17世紀イギリス文学を代表する長編叙事詩です。旧約聖書創世記のエデンの園におけるアダムとイブの物語を題材に、1万行を超える壮大なスケールで人間の堕落、善悪の闘争、自由意志と運命といった深遠なテーマを描いています。
複雑な韻律と豊かな文語体で綴られる物語
「失楽園」は、ブランクバースと呼ばれる韻律を用いず、弱強五歩格で書かれています。これは古典文学からの影響を強く受けたもので、格調高い文語体と相まって、作品に荘厳な雰囲気を与えています。ただし、この文体は現代の読者にとっては難解に感じる場合があり、注釈や解説書を活用することが推奨されます。
多面的で深みのある登場人物たち
「失楽園」の魅力の一つは、神、サタン、アダム、イブといった登場人物たちが、単純な善悪の二元論を超えた複雑な存在として描かれている点にあります。特に、サタンは堕天使でありながら、雄弁でカリスマ性すら感じさせる複雑なキャラクターとして描かれ、読者に様々な解釈を許容します。
「失楽園」を読む上でのポイント
「失楽園」を読む際には、以下の点が参考になります。
* 旧約聖書、特に創世記の内容を事前に知っておくことで、物語への理解が深まります。
* ミルトンが生きた17世紀イギリスの歴史的・宗教的背景を考慮すると、作品に込められたメッセージがより明確になるでしょう。
* 作品中に散りばめられた古典文学や神話の引用を辿ることで、ミルトンの博識ぶりと、作品に込められた多層的な意味合いが見えてきます。
「失楽園」は一読しただけでは理解が難しい部分も多い作品ですが、根気強く読み進めることで、人間の根源的な問題について深く考えさせられる、文学史上に残る傑作です。