## ミルトンの失楽園の表象
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神
ミルトンは『失楽園』において、全能かつ全知の神を
描いています。神は、自らの被造物である人間たちの自由意志を尊重し、
彼らが自ら選択した結果として楽園を追放されることを
予見していながらも、その運命に介入することをしません。
神の絶対的な正義と慈悲深さは、サタンの反逆と
人間の堕落という悲劇的な出来事を通して際立ちます。
しかし、同時に、人間の理解を超えた存在として、
その真意を完全に理解することは不可能な存在としても描かれています。
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サタン
サタンは、かつては高位の天使であったにもかかわらず、
神への反逆によって地獄に堕とされた存在として登場します。
彼は雄弁でカリスマ性を持ち、自らの境遇を
神の不当な支配に対する抵抗であると正当化しようとします。
プライドと野心に突き動かされ、人間を堕落させることで
神への復讐を果たそうとするサタンの姿は、
悪の魅力と危険性を体現しています。
一方で、彼の苦悩や孤独、敗北感も描かれており、
単純な悪の象徴を超えた複雑な内面を持つ存在として描かれています。
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アダムとイヴ
アダムとイヴは、神によって創造された
最初の男女であり、楽園エデンで罪のない生活を送っていました。
アダムは知性と理性、イヴは美しさと好奇心を象徴する存在です。
サタンの誘惑によって禁断の果実を口にした二人は、
神の恩寵を失い、楽園から追放されてしまいます。
彼らの堕落は、人間の弱さや罪の起源を象徴すると同時に、
自由意志と責任、愛と誘惑といった普遍的なテーマを浮かび上がらせます。
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楽園
楽園エデンは、自然の豊かさと美しさに満ち溢れた理想郷として描かれています。
そこには、あらゆる種類の動植物が生息し、
アダムとイヴは労働の苦しみや病気、死の恐怖から解放された生活を送っていました。
しかし、サタンの侵入とアダムとイヴの堕落によって、楽園は失われてしまいます。
失われた楽園は、人間の原罪によって失われた innocence(無垢)と、
永遠に失われた理想郷への憧憬を象徴しています。