Skip to content Skip to footer

ミュルダールの『アジアのドラマ』の思想的背景

## ミュルダールの『アジアのドラマ』の思想的背景

###

西洋経済学からの批判的継承

ミュルダールは、ストックホルム大学で経済学を学び、初期にはクヌート・ヴィクセルやエリク・リンダールといったスウェーデンの経済学者たちの影響を受けました。これらの経済学者は、新古典派経済学の限界を認識し、現実の経済問題に対処するために、政府の介入や社会福祉政策の必要性を説いていました。ミュルダールもまた、当時の主流であった新古典派経済学の市場メカニズムへの過度な信頼に批判的であり、現実の経済分析には、制度や社会構造、歴史的文脈といった要素を考慮する必要があると考えていました。

###

制度経済学の影響

ミュルダールは、新古典派経済学の限界を克服するために、制度経済学にも関心を持ちました。彼は、特に、アメリカ経済学者であるソースタイン・ヴェブレンやジョン・コモンズの著作から影響を受けました。ヴェブレンは、経済活動を理解するには、社会の制度や習慣、価値観といった要素が重要であると主張しました。コモンズは、経済活動は、個人だけでなく、企業や労働組合、政府といった様々な集団間の交渉や紛争によって規定されると考えました。ミュルダールは、これらの制度経済学者の考え方を発展させ、開発途上国の経済問題を分析する上で、制度や社会構造の重要性を強調しました。

###

価値判断の重要性

ミュルダールは、経済学における価値判断の重要性を強く認識していました。彼は、経済学者は、客観的な分析者を装うのではなく、自らの価値観を明確に示すべきだと主張しました。また、経済学は、単なる理論ではなく、現実の社会問題の解決に貢献すべきであると考えていました。これらの考え方は、『アジアのドラマ』においても貫かれており、彼は、西洋中心的な価値観に基づく開発モデルを批判し、アジア諸国の独自の価値観や文化を尊重した開発の必要性を訴えました。

Amazonで購入する

Leave a comment

0.0/5