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ミュルダールの「アジアのドラマ」の秘密

## ミュルダールの「アジアのドラマ」の秘密

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「アジアのドラマ」とは何か

スウェーデンの経済学者、グンナー・ミュルダールが1968年に発表した著書『アジアのドラマ:南アジアにおける貧困に関する調査』の中で提示した概念。「ドラマ」とは、開発途上国が近代化、経済成長を目指す過程で直面する、政治、経済、社会、文化など、様々な側面における複雑に絡み合った問題群を指す。

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ミュルダールの分析

ミュルダールは、アジア、特に南アジア諸国の開発における問題点を、従来の西洋中心的な経済理論ではなく、社会構造、文化、歴史、政治体制といった多角的な視点から分析した。彼は、貧困、人口増加、失業、教育不足、社会的不平等といった諸問題が相互に関連し合い、悪循環を生み出していることを指摘した。

ミュルダールは、西洋諸国の経済発展モデルをアジア諸国にそのまま当てはめることの危険性を説いた。彼は、アジア諸国が独自の文化、歴史、社会構造を考慮した上で、自らの発展モデルを構築する必要性を強調した。

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「アジアのドラマ」の特徴

ミュルダールが「アジアのドラマ」の中で指摘した特徴的な問題は、以下の点が挙げられる。

* **貧困の悪循環:** 低所得、低貯蓄、低投資、低生産性という悪循環が、貧困から抜け出すことを困難にしている。
* **人口増加:** 人口増加が経済成長を圧迫し、一人当たりの所得向上を阻害している。
* **失業と不完全雇用:** 農村部における人口増加と都市部への人口集中により、失業と不完全雇用が深刻化している。
* **教育不足:** 教育機会の不足が、生産性の向上や技術革新を阻害している。
* **社会的不平等:** 階級、カースト、ジェンダーなどによる社会的不平等が、経済発展の阻害要因となっている。

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「ソフト・ステート」

ミュルダールは、アジア諸国の政治体制にも注目し、「ソフト・ステート」という概念を提唱した。「ソフト・ステート」とは、汚職が蔓延し、法の執行が弱く、政府の指導力が不足している状態を指す。

彼は、「ソフト・ステート」が経済発展を阻害する要因の一つであると指摘した。腐敗は、投資意欲を減退させ、資源配分の歪みを生み出す。法の執行の弱さは、契約の不履行や財産権の侵害を招き、経済活動を阻害する。

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「アジアの価値」

ミュルダールは、「アジアの価値」にも注目した。彼は、家族や共同体を重視するアジアの伝統的な価値観が、経済発展を促進する可能性がある一方、変化への抵抗や社会的不平等を固定化する可能性もあることを指摘した。

彼は、アジア諸国が伝統的な価値観と近代的な価値観を調和させながら、自らの発展モデルを構築していくことの重要性を強調した。

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