## マーシャルの経済学原理から学ぶ時代性
時代背景:19世紀後半のイギリス
アルフレッド・マーシャルが『経済学原理』を著したのは1890年。それは、産業革命を経て資本主義経済が成熟期を迎えた、ヴィクトリア朝時代のイギリスでした。
当時のイギリスは、世界中に広大な植民地を有し、「世界の工場」として経済的繁栄を謳歌していました。
しかしその一方で、貧富の格差の拡大、都市部への人口集中、環境問題など、資本主義経済のひずみも顕在化していました。
このような時代背景の中、マーシャルは古典派経済学の限界を認識し、現実の経済社会に即した新たな経済学の体系を構築しようと試みました。
古典派経済学からの転換点
アダム・スミスをはじめとする古典派経済学は、労働価値説に基づき、自由放任主義を主張していました。
しかし、19世紀後半になると、現実の経済はより複雑化し、古典派経済学では説明できない現象が増えてきました。
そこでマーシャルは、需要と供給の両方に基づいて価格が決定されると説く「限界効用理論」を導入し、価格決定メカニズムをより精緻に分析しました。
また、時間概念を重視し、「短期」と「長期」を区別することで、経済現象の動態的な分析を試みました。
社会問題への関心
マーシャルは、経済学が単なる理論ではなく、社会問題の解決に役立つべきだと考えていました。
彼は貧困問題に強い関心を持ち、その原因を分析し、解決策を提示しようとしました。
特に、教育や職業訓練の重要性を強調し、人々の能力向上を通じて貧困の克服を目指しました。
また、労働組合の役割を評価し、労働者の待遇改善を訴えました。
現代経済学への影響
マーシャルの経済学は、現代経済学の基礎となる多くの重要な概念や分析手法を提供しました。
特に、需要と供給の分析、限界効用理論、弾力性の概念などは、現代のミクロ経済学の基礎となっています。
また、経済学を社会問題の解決に役立てようとする彼の姿勢は、現代の経済学者たちにも受け継がれています。