マンのヴェニスに死すの構成
第1章
作品は、第一次世界大戦前の緊迫した時代、主人公の作家グスタフ・フォン・アッシェンバッハがミュンヘンから保養のためヴェネツィアへ向かう場面から始まります。アッシェンバッハは老境に差し掛かり、創作活動に行き詰まりを感じていました。彼は船旅やゴンドラの上で、ポーランド人の少年タジオの美しさに心を奪われます。
ヴェネツィアのホテルに到着したアッシェンバッハは、そこでタジオと再会します。タジオは家族と宿泊しており、アッシェンバッハは彼らを遠巻きに見つめながら、その美しさにますます魅了されていきます。彼はタジオを追いかけるようにヴェネツィアの街をさまよい、創作意欲を一時的に回復させますが、それは叶わぬ憧憬と老いへの焦燥感を伴うものでした。
第2章
ヴェネツィアに不穏な空気が漂い始めます。消毒薬の匂いが街に満ち、コレラの噂が流れ始めます。しかし、アッシェンバッハは真実から目を背け、タジオへの執着を深めていきます。彼は理性を失い、老醜を晒しながらも、タジオとその家族の後をつけ回し続けます。
ついにヴェネツィアでコレラが蔓延し始めます。当局は事態を隠蔽しようとしますが、街は恐怖と死の影に覆われていきます。それでもアッシェンバッハはタジオへの愛にとりつかれ、ヴェネツィアから離れることができません。そして、ある日、彼は浜辺でタジオの死を象徴するような幻影を目撃します。
第3章
コレラの蔓延が明らかになってもなお、アッシェンバッハはヴェネツィアに留まります。彼は老いと死の影を濃く感じながらも、タジオへの想いを断ち切ることができません。ある日、アッシェンバッハはホテルの美容師に若作りをさせ、タジオの姿を追い求めるかのように街へ出ます。
そして、物語は、コレラに感染したアッシェンバッハが、浜辺のデッキチェアに座り、衰弱していく中で、波打ち際で遊ぶタジオの姿を最後まで見つめ続ける場面で終わります。
以上が、「ヴェニスに死す」の章立てに基づいた構成です。各章は、アッシェンバッハの心理的な変化と、ヴェネツィアに忍び寄るコレラの脅威を対比的に描きながら、破滅へと向かっていく様を描写しています。