マンのブッデンブローク家の人々の対称性
世代間の対称性
トーマス・マンの『ブッデンブローク家の人々』では、世代を超えて繰り返される行動や運命のパターンが描かれています。
裕福な商人であるヨハン・ブッデンブロークと、芸術を愛する妻アントワネットの対比は、彼らの息子たちの世代にも引き継がれています。長男のトーマスは父と同じく商才に長けていますが、次男のクリスチアンは芸術家肌で、父の期待に応えることができません。
また、トーマスの息子であるハンノは、芸術への傾倒と虚弱な体質という点で、大叔父のクリスチアンと共通点を持っています。ハンノはブッデンブローク家の没落を象徴する存在であり、彼の死は、一族の衰退を決定づける出来事となります。
このように、小説では、世代を超えて繰り返される対称的なパターンを通じて、ブッデンブローク家の繁栄と衰退が描かれています。
人物造形の対称性
『ブッデンブローク家の人々』には、対照的な性格を持つ人物が多く登場します。
例えば、トーマスとクリスチアンの兄弟は、性格も人生も対照的です。トーマスは、伝統と社会的地位を重視する現実主義者ですが、クリスチアンは、芸術と快楽を求める夢想家です。
また、トーマスの妻であるゲルダと、クリスチアンの妻であるアリーネも対照的な人物です。ゲルダは、冷淡で計算高い女性ですが、アリーネは、愛情深く献身的な女性です。
これらの対照的な人物造形は、ブッデンブローク家の内部における対立や葛藤を際立たせるだけでなく、当時の社会における価値観の対立をも象徴しています。
構成上の対称性
『ブッデンブローク家の人々』は、構成上も対称性を意識して書かれています。
小説は、ブッデンブローク家の隆盛期から始まり、徐々に衰退していく様子が描かれています。そして、小説の後半では、前半で描かれた出来事と対になるような出来事が起こります。
例えば、小説の冒頭では、ブッデンブローク家が新しい家を建て、盛大なパーティーを開く場面が描かれています。しかし、小説の終盤では、その家は売却され、一族は没落の一途をたどります。
このように、構成上の対称性も、『ブッデンブローク家の人々』という小説の重要な要素の一つとなっています。