## マルサスの人口論の技法
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論証の構成
マルサスは『人口論』において、幾何級数的増加と算術級数的増加という二つの単純なモデルを対比させることで、人口と生活資源の間に生じる不均衡を論証しました。 これは、複雑な現実を単純化し、より明確な形で提示する手法と言えるでしょう。
まず、マルサスは人口増加について、抑制されない限り、一定の比率で増加し続けると主張します。そして、この増加は25年ごとに倍増するという、幾何級数的な増加を遂げると説明します。
一方、生活資源、特に食料の生産増加については、土地の開墾や農業技術の進歩により増加するものの、その増加は一定の量ずつにとどまるとし、算術級数的な増加として提示します。
このように、マルサスは人口と生活資源それぞれの増加を単純な数式モデルに置き換えることで、両者の間に必ず不均衡が生じることを論理的に示そうとしました。
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歴史的事実の援用
マルサスは自らの主張を裏付けるために、歴史的事実を幅広く参照しています。 特に、古代ギリシャやローマ、新大陸など、様々な時代や地域の事例を挙げることで、人口増加が生活資源を圧迫し、貧困や飢饉、病気の蔓延などをもたらしたことを具体的に示しています。
例えば、古代ローマ帝国の繁栄と衰退は、人口増加と資源の枯渇という観点から分析され、人口増加がもたらす社会的影響を説明する例として用いられています。
また、新大陸における人口増加についても言及し、ヨーロッパからの移民によって人口が急増した結果、食料不足や疫病の発生など、様々な問題が生じたと指摘しています。
このように、マルサスは歴史的事実を積み重ねることで、自らの主張の妥当性を高め、読者に人口問題の深刻さを訴えかけようとしました。