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マルクス/エンゲルスのドイツ・イデオロギーの面白さ

## マルクス/エンゲルスのドイツ・イデオロギーの面白さ

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唯物史観の誕生

「ドイツ・イデオロギー」の最大の魅力は、マルクスとエンゲルスが後に「唯物史観」と呼ぶことになる歴史観を、当時のヘーゲル左派の思想を痛烈に批判しながら、彼ら自身の言葉で初めて明確に提示している点にあります。

それまでの歴史観は、観念論の歴史観に代表されるように、歴史を「精神」や「理念」の進歩として捉えるものが主流でした。しかし、マルクスとエンゲルスは、この観念論の歴史観を転倒させ、「現実の生活過程」から歴史を説明しようと試みました。

彼らによれば、歴史を動かす根本的な力は、人間が生活の必要から行う物質的な生産活動にあります。人間は、自然とのかかわりの中で、生産手段や生産関係を変化させることで、物質的な生産様式を形成してきました。そして、この物質的な生産様式が、社会の政治構造や法的諸関係、思想や文化といった上部構造を規定するというのです。

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鋭い批判精神とウィットに富んだ筆致

「ドイツ・イデオロギー」は、単に唯物史観を提示するだけでなく、当時のドイツ思想界を席巻していたヘーゲル左派への痛烈な批判の書としても読むことができます。マルクスとエンゲルスは、若き日にヘーゲル哲学に傾倒していましたが、後にその観念論的な歴史観を克服し、唯物史観へと到達しました。

本書では、ブルーノ・バウアーやマックス・シュティルナーといったヘーゲル左派の代表的な思想家を名指しで批判しており、その論旨は時に辛辣さを極めます。しかし、彼らの批判は、単なる感情的な罵倒ではなく、常に論理的な思考と鋭い分析に基づいています。

また、本書の特徴として、そのウィットに富んだ筆致も挙げられます。例えば、マルクスとエンゲルスは、観念論的な歴史観を風刺するために、「聖家族」や「批判的批判」といった皮肉に満ちた表現を用いています。こうしたユーモラスな表現は、読者を退屈させることなく、むしろ彼らの思想をより印象的なものとしています。

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未完の書が持つ可能性と現代社会への示唆

「ドイツ・イデオロギー」は、マルクスとエンゲルスの共同執筆による大部の著作となるはずでしたが、諸般の事情により未完に終わっています。そのため、体系的な議論が展開されないまま終わっている部分や、後年のマルクスの思想と矛盾する記述も見られるなど、難解な部分も少なくありません。

しかし、こうした未完成な部分があるからこそ、読者自身の解釈や思考を促すという側面も持ち合わせています。読者は、本書を読み解くことを通じて、マルクスとエンゲルスの思考の軌跡を辿り、彼らが当時直面していた問題意識を共有することができます。

また、「ドイツ・イデオロギー」で展開される唯物史観や、イデオロギー論は、現代社会においても重要な示唆を与えてくれます。情報技術の発達やグローバル化が進む現代社会において、私たちの思考や行動は、様々な情報やイデオロギーによって影響を受けています。

「ドイツ・イデオロギー」は、こうした現代社会の複雑な状況を分析するための視座を提供してくれるとともに、私たち自身の思考の枠組みを問い直すきっかけを与えてくれるでしょう。

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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。

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