## マルクス・アウレリウスの『自省録』の思想的背景
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ストア哲学
『自省録』は、古代ギリシャ・ローマ世界に広く浸透していたストア哲学の影響を色濃く受けています。ストア派は、理性に従って生きること、感情に振り回されないこと、美徳を追求することを重視しました。マルクス・アウレリウスは、ストア派の代表的哲学者エピクテトスの『語録』を愛読していたと言われ、『自省録』にもその影響が強く見られます。
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ストア派の中心的概念
ストア哲学における重要な概念は、『自省録』の内容を理解する上で欠かせません。
* **ロゴス(理性)**: ストア派は、宇宙全体を貫く普遍的な理性である「ロゴス」の存在を説きました。人間はこのロゴスの一部を理性として持ち、理性に従って生きることで自然と調和した状態になることができると考えました。マルクス・アウレリウスも、理性に従って感情を制御し、義務を果たすことの重要性を説いています。
* **運命**: ストア派は、宇宙のあらゆる出来事はロゴスによって定められた必然的なものであると考え、「運命」を受け入れることを説きました。マルクス・アウレリウスも、『自省録』の中で運命に従うことの重要性を繰り返し述べています。
* **美徳**: ストア派にとって、唯一の善は「美徳」であり、富や名声などの外的要因は重要ではありませんでした。マルクス・アウレリウスも、正義、知恵、勇気、節制といったストア的 Tugend(美徳)を重視し、それらを追求することを説いています。
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ローマ帝国内のストア主義
マルクス・アウレリウスの時代、ストア哲学はローマ帝国の知識人層に広く受け入れられていました。特に、セネカ、エピクテトスといったストア派の思想家は大きな影響力を持っていました。マルクス・アウレリウスも、彼らストア派の先行者たちの影響を受けています。
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『自省録』における独自性
『自省録』はストア哲学の影響を色濃く反映していますが、マルクス・アウレリウス独自の考察も含まれています。例えば、彼はストア派の禁欲主義的な側面よりも、人間的な感情や苦悩にも目を向けています。
これらの思想的背景を踏まえることで、『自省録』への理解をより深めることができます。