## マクルーハンの人間拡張の原理の周辺
メディアは人間の拡張である
カナダの英文学者であり、コミュニケーション学者、思想家でもあったマーシャル・マクルーハン（1911-1980）は、その主著『グーテンベルクの銀河系』（1962年）や『メディア論』（1964年）の中で、「メディアは人間の拡張である」という有名なテーゼを提唱しました。これは、あらゆるメディアは人間の人体、感覚、思考、能力などを拡張したものであることを意味します。
メディアによる感覚の拡張と偏り
マクルーハンによれば、それぞれのメディアは特定の感覚器官を拡張します。例えば、文字は視覚を、ラジオは聴覚を、テレビは視覚と聴覚の両方を拡張します。
しかし、特定の感覚器官の拡張は、他の感覚器官の働きを抑制することにつながります。例えば、文字によるコミュニケーションは視覚を優位にする一方で、聴覚や触覚などを軽視する傾向があります。マクルーハンはこのようなメディアによる感覚の偏りを「感覚の麻痺」と呼び、それが人間の思考や行動に大きな影響を与えることを指摘しました。
ホットメディアとクールメディア
マクルーハンはメディアを「ホットメディア」と「クールメディア」に分類しました。ホットメディアとは、情報を高密度に提供し、受容者に多くの参加を要求しないメディアです。例えば、写真、ラジオ、映画などはホットメディアに分類されます。
一方、クールメディアとは、情報量が少なく、受容者が情報を補完するために積極的に参加する必要があるメディアです。例えば、漫画、テレビ、電話などはクールメディアに分類されます。
メディアの考察における注意点
マクルーハンの理論は、メディアが人間や社会に与える影響を考える上で重要な視点を提供する一方で、いくつかの批判も存在します。例えば、マクルーハンの主張は技術決定論的であるという批判や、彼のメディア分類は必ずしも明確ではないという批判があります。
これらの批判を踏まえつつ、マクルーハンの理論を現代のデジタルメディアに適用し、その影響を多角的に考察していくことが重要です。