マキャヴェッリの君主論に影響を与えた本
トゥキディデスの歴史
マキャヴェリの『君主論』に影響を与えた作品の中で、古代ギリシャの歴史家トゥキディデスの書いた『歴史』ほど重要なものはありません。ペロポネソス戦争(紀元前431~404年)の記録であるこの本は、マキャヴェリに深い影響を与え、彼の政治思想、特に権力、道徳、人間の性質の関係についての思想を形作りました。
トゥキディデスは『歴史』の中で、理想主義や道徳的配慮よりも、利己心、権力闘争、実利が国際関係を左右すると主張しています。アテネとスパルタの抗争の容赦のない現実的な描写を通して、彼は戦争や外交における道徳の無益さを示し、国家はしばしば生き残りのために非情な決断を強いられることを強調しています。この現実主義的な視点は、道徳的理想よりも政治的必要性を優先する必要性を強調するマキャヴェリの君主論と深く共鳴しています。
トゥキディデスの影響は、マキャヴェリの人間の性質に対する見方に見られます。『歴史』に見られる人間行動の率直な評価は、マキャヴェリ自身の信念、すなわち人間は本質的に利己的で、野心的で、機会があれば道徳を踏みにじるものであるという信念と一致していました。この性悪説は『君主論』の基礎となっています。マキャヴェリは、君主は人間の性質の現実を認識し、権力を獲得し維持するためには、必要であれば欺瞞、残虐行為、武力を行使する用意がなければならないと主張しています。
さらに、トゥキディデスは政治的安定と秩序を維持する上での力の役割を強調しています。彼はアテネが力の頂点にあった時期と、その後、ペロポネソス戦争で敗北した後、帝国が衰退していく様子を対比させています。この歴史的教訓は、マキャヴェリに深い影響を与えたに違いありません。彼は、君主が混乱を防ぎ、支配を守るためには、断固たる行動と必要な場合には武力の行使を含む強力なリーダーシップを実証しなければならないと主張しています。
トゥキディデスの歴史的方法は、『君主論』にも影響を与えました。トゥキディデスは一次資料と事実に基づく分析に重点を置いており、客観性と政治的偏見の排除に努めました。このアプローチは、歴史的出来事、特に古典古代の事例を、権力力学と政治行動に関する時代を超えた教訓を引き出すための実例として使用したマキャヴェリの共感を呼んだに違いありません。
マキャヴェリの『君主論』とトゥキディデスの『歴史』の類似点は、両作品が共有する現実主義、人間の性質に対する悲観的な見方、政治における力の重要性への重点に見られます。トゥキディデスの著作は、マキャヴェリに、権力政治、道徳的ジレンマ、歴史的教訓を通して学ぶことの重要性についての洞察を提供しました。彼は、何世紀にもわたって政治思想家を魅了し続ける、時代を超えた政治的戦略と人間の性質の扱いに関する傑作である『君主論』に影響を与えたのです。