## マイネッケの近代史における国家理性の理念の翻訳
「近代史における国家理性の理念」の翻訳について考察するにあたって
、まず留意すべきは、この題名自体がすでに解釈を孕んでいるということです。原題は “Die Idee der Staatsräson in der neueren Geschichte” です。
“Idee” の翻訳について
、これは「理念」と訳されることが多いですが、「観念」「概念」「思想」など、文脈によっては他の訳語も考えられます。マイネッケの文脈では、歴史の中で具体的な形を取って現れる力としての「理念」という意味合いが強いと考えられます。
“Staatsräson” の翻訳について
、これは一般的に「国家理性」と訳されますが、”Staat” は「国家」、 “Raison” は「理性」を意味し、”Staatsräson” を直訳すると「国家の理性」となります。ただし、”Staatsräson” には「国家の利益のためには道徳や法律に反することも許されるという考え方」という含みがあり、「国家利己主義」といった訳語を当てる場合もあります。マイネッケ自身はこの概念に批判的であったことを踏まえる必要があるでしょう。
“Neuere Geschichte” の翻訳について
、「近代史」と訳されるのが一般的ですが、”neuere” は「新しい」という意味なので、「近世史」と訳すべきだという意見もあります。実際、マイネッケが想定していた時代区分は、現代の一般的な歴史区分における「近世」と重なる部分が多いです。
以上の点を踏まえると
、「近代史における国家理性の理念」という翻訳は、必ずしも誤りではありません。しかし、原題が持つニュアンスを完全に表現できているとは言い難いのも事実です。より深く理解するためには、”Idee”、”Staatsräson”、”Neuere Geschichte” といった key word をどのように解釈するか、文脈に応じて慎重に判断する必要があると言えるでしょう。