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マイネッケの近代史における国家理性の理念に影響を与えた本

マイネッケの近代史における国家理性の理念に影響を与えた本

ランケ『ローマ教皇史』:歴史記述における客観性と国家の独自性の発見

 フリードリヒ・マイネッケは、近代国家の起源と発展を、理性に基づく国家の形成過程として捉え、その過程を「国家理性」という概念を用いて説明しました。 彼の歴史観に大きな影響を与えた一冊として、歴史家レオポルト・フォン・ランケの主著『ローマ教皇史』が挙げられます。

 ランケは、史料批判に基づいた客観的な歴史記述を目指し、「ありのままに」歴史を描くことを主張しました。彼は、従来の歴史記述に見られた主観的な解釈や道徳的な判断を排し、史料そのものに語らせることで、歴史的事実をありのままに再現しようとしました。

 マイネッケは、ランケの歴史観から大きな影響を受け、歴史研究における客観性と史料批判の重要性を認識しました。そして、自らの歴史研究においても、ランケの方法論を踏襲し、膨大な史料に基づいた実証的な研究を展開しました。

 特に、『ローマ教皇史』において、ランケはローマ教皇庁という国家的な組織の変遷を、周辺国家との関係性の中で描き出しました。彼は、教皇庁が、中世においては宗教的な権威だけでなく、世俗的な権力としても大きな影響力を持っていたことを明らかにしました。

 そして、宗教改革以降、教皇庁の影響力が衰退していく過程を、周辺国家の台頭と対比させながら描き、国家間の力関係の変化が歴史を動かす大きな要因となることを示しました。

 マイネッケは、ランケのこの歴史観から、国家を歴史の主体として捉える視点を学びました。彼は、それぞれの国家が独自の文化、伝統、利害に基づいて行動し、その相互作用によって歴史が形成されると考えました。

 そして、国家が自らの生存と発展のために、理性に基づいて行動し、国内の秩序を維持し、他国との関係を調整していく過程を「国家理性」と呼び、近代国家の形成原理として位置づけました。

 このように、ランケの『ローマ教皇史』は、マイネッケに、歴史研究における客観性と史料批判の重要性を認識させるとともに、国家を歴史の主体として捉える視点を提供しました。

 そして、マイネッケは、ランケの影響を受けながらも、独自の視点から近代国家の形成過程を分析し、「国家理性」という概念を提唱するに至ったのです。

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