## マイイネッケの歴史主義の成立に影響を与えた本
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**ランケ『世界史におけるロマン主義とゲルマン主義』の影響**
ヨハン・グスタフ・ドロイゼンの弟子として歴史学を学んだマイネッケは、当初は師と同じくプロイセン中心史観の影響を受け、政治史を中心とした歴史叙述を行っていました。しかし、やがてドロイゼンの方法論に限界を感じるようになり、歴史をより包括的に捉えようとするようになります。そんな中、マイネッケの思想に大きな影響を与えたのが、同時代の歴史家レオポルト・フォン・ランケの著作『世界史におけるロマン主義とゲルマン主義』(1835-47年)でした。
この書は、ランケがベルリン大学で行った講義録をまとめたもので、19世紀前半のヨーロッパを席巻したロマン主義やナショナリズムといった思想潮流を歴史的に分析したものです。ランケは、これらの思想を単なる政治的・社会的現象として捉えるのではなく、むしろ文化史的な視点から解釈しようと試みました。
具体的には、ランケはロマン主義を、近代市民社会の台頭によって失われつつあった、中世的な共同体意識や宗教的感情へのノスタルジアとして捉えました。そして、このロマン主義的な精神が、ゲルマン民族の独自性に対する意識(ゲルマン主義)と結びつくことで、ドイツ統一運動といった政治運動へと発展していく過程を分析しました。
マイネッケは、このランケの著作から多くの示唆を受けたと考えられています。特に、以下の2点が重要です。
1. **文化史的な視点の導入**:ランケは、政治や経済といった従来の歴史学が重視してきた分野だけでなく、文学、芸術、宗教、思想といった文化現象にも注目することで、歴史をより多面的かつ総合的に理解しようとしました。マイネッケは、このランケの姿勢に深く共鳴し、自らの歴史研究においても文化史的な視点を重視するようになりました。
2. **個体としての国家の認識**:ランケは、それぞれの国民は、独自の言語、文化、伝統を持つ個性的な存在であると主張しました。そして、この個性を歴史の中で発展させていくことが、それぞれの国民の使命であると考えました。マイネッケは、このランケの国家観に影響を受け、国家を単なる権力機構としてではなく、独自の文化や伝統を持つ個性的な歴史的主体として捉えるようになりました。
このように、マイネッケの歴史主義は、ランケの『世界史におけるロマン主義とゲルマン主義』から多大な影響を受けて成立したと言えます。特に、文化史的な視点の導入と個体としての国家の認識という2点は、その後のマイネッケの思想を形作る上で重要な役割を果たしました。