## ポーリングの化学結合論の対極
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量子力学に基づく化学結合論の誕生
ポーリングの化学結合論は、量子力学の概念を取り入れながらも、直感的な理解を重視したものでした。 彼の共鳴理論などは、多くの化学現象を定性的に説明することに成功し、化学者の化学結合に対する理解を大きく前進させました。
しかし、ポーリングの理論は、その直感的な理解のしやすさの一方で、定量的な予測を行うには限界がありました。 原子や分子の性質をより正確に理解し、予測するためには、量子力学に基づいたより厳密な理論が必要とされてきました。
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分子軌道法の台頭
ポーリングの原子価結合理論に対置されるものとして、分子軌道法が挙げられます。 分子軌道法は、分子中の電子を、個々の原子に属するのではなく、分子全体に広がる軌道(分子軌道)に属すると考える手法です。 これは、原子価結合理論のように、電子対が特定の原子間に局在していると考えるのとは対照的です。
分子軌道法は、1920年代後半から1930年代初頭にかけて、Friedrich Hund、Robert Mulliken、John Lennard-Jones、Erich Hückelらによって開発されました。 彼らは、量子力学の基礎方程式であるシュレーディンガー方程式を分子系に適用することで、分子軌道の概念を確立しました。
初期の分子軌道法は、水素分子イオン (H₂⁺) のような単純な分子にしか適用できませんでしたが、計算機科学の発展に伴い、より複雑な分子にも適用できるようになりました。 今日では、分子軌道法は、分子の構造、結合エネルギー、電子状態、分光学的性質などを計算するための標準的な手法となっています。
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代表的な書籍
分子軌道法を理解する上で、いくつかの重要な書籍が挙げられます。
* **”Molecular Orbitals in Chemistry, Physics, and Biology”** by C. J. Ballhausen and H. B. Gray (1964)
* **”Chemical Applications of Group Theory”** by F. Albert Cotton (1963)
* **”Valence”** by C. A. Coulson (1952)
これらの書籍は、分子軌道法の基礎的な概念から応用までを詳しく解説しており、量子力学に基づいた化学結合論を学ぶ上で欠かせないものとなっています。