## ポーのモルグ街の殺人から学ぶ時代性
### 19世紀のパリを舞台としたゴシック小説
「モルグ街の殺人」は、1841年に発表されたエドガー・アラン・ポーの短編小説です。19世紀のパリを舞台に、謎めいた二重殺人事件とその解決を描いています。作品は推理小説の草分けとして知られ、後の探偵小説に大きな影響を与えました。
### 当時の社会不安と恐怖を反映
作品は、当時の社会不安や人々の抱える恐怖を反映しています。産業革命による都市化の進展は、パリにもスラム街を生み出し、貧富の格差を広げました。また、新聞の発達により、凶悪犯罪の報道が人々の不安を煽る側面もありました。
「モルグ街の殺人」で描かれる密室殺人や残虐な犯行は、当時の読者にとって現実的な恐怖として映ったでしょう。また、犯人が人間ではないという意外な結末も、合理的な説明ができない不安感をさらに増幅させています。
### 科学的思考と合理性の台頭
一方、本作は、19世紀に台頭してきた科学的思考や合理性を色濃く反映している作品でもあります。主人公のデュパンは、鋭い観察力と論理的な推理によって事件の真相に迫ります。
彼の推理方法は、当時の読者にとって斬新なものであり、理性によって謎を解き明かすことができるという希望を与えていたとも考えられます。
### 異文化への関心と偏見
「モルグ街の殺人」では、犯人がオランウータンであることが明かされます。当時のヨーロッパでは、植民地支配の影響で、異文化への関心が高まっていましたが、同時に偏見も根強く存在していました。
オランウータンを犯人に設定したことは、未知なるものへの恐怖や、人間以外の存在に対する当時のヨーロッパ人の複雑な感情を反映していると考えられます。
### 女性の社会的地位と描写
「モルグ街の殺人」には、被害者であるランパート母娘以外、女性はほとんど登場しません。これは、当時の女性の社会的地位の低さを反映していると言えるでしょう。
また、被害者は残虐な方法で殺害されており、女性を弱い存在として描く当時のステレオタイプが反映されているとも考えられます。
「モルグ街の殺人」は、単なる推理小説を超え、19世紀の社会や文化を理解するための貴重な資料といえます。作品を読み解くことで、当時の時代背景や人々の思考をより深く理解することができます。