ボワソナードの刑法草案註解の秘密
ボワソナードと日本の近代法典編纂
ギュスターヴ・エミール・ボワソナード(Gustave Émile Boissonade de Fontarabie, 1825-1910)は、フランスから招聘された法律家で、日本の近代法典編纂に大きな影響を与えた人物として知られています。彼は1873年(明治6年)に来日し、司法省顧問として19年間日本に滞在しました。その間、民法、商法、刑法などの法典編纂に携わり、日本の法律の近代化に尽力しました。
幻の刑法草案と註解の存在
ボワソナードが手掛けた仕事の中でも、特に注目されるのが刑法草案とその註解です。彼はフランス刑法を参考に、日本の伝統的な法観念も踏まえた独自の刑法草案を作成しました。しかし、この草案は、当時の日本政府内の意見対立などから採用には至らず、幻の草案と言われることもあります。
ボワソナードはこの刑法草案に詳細な註解を書き残しており、これは日本における近代法の形成過程を知る上で貴重な資料となっています。この註解には、彼が草案を作成するにあたってどのような点に留意し、どのような考えに基づいて条文を起草したのかが詳細に記されています。
註解が伝えるボワソナードの思想
ボワソナードの刑法草案註解は、単なる法技術的な解説書ではなく、彼の法哲学や社会思想を色濃く反映した内容となっています。例えば、彼は個人の自由と権利を重視する立場から、刑罰の範囲を必要最小限に抑え、罪刑法定主義や無罪推定の原則を明確に打ち出しています。また、当時の日本社会における身分制度や家父長制の弊害を批判し、法の下の平等を強く訴えています。
歴史資料としての価値
ボワソナードの刑法草案註解は、日本の近代法の原点を探る上で欠かせない資料です。彼の思想や法解釈は、その後の日本の法典編纂や法解釈に大きな影響を与えました。また、当時の日本社会の状況や、近代化に向けた課題についても多くの示唆を与えてくれます。
現在、ボワソナードの刑法草案註解は、研究者によって分析が進められており、論文や書籍などでその内容が紹介されています。彼の思想や業績をより深く理解するため、さらなる研究が期待されます。