ボワソナードの刑法草案註解の批評
ボワソナード刑法草案註解に対する主な批判点
ボワソナードの起草した旧刑法は、フランス刑法典を模範としつつも、日本の伝統や文化を考慮した条文が盛り込まれていた点が評価されています。しかし、その一方で、公布から100年以上が経過した現代の視点から見ると、いくつかの批判点も指摘されています。
1. 時代遅れな規定
第一に、制定当時の社会状況や価値観を色濃く反映した結果、現代の社会規範にそぐわない規定も見られる点が挙げられます。例えば、姦通罪や名誉毀損罪に関する規定は、個人の尊厳や性差による不平等を解消しようとする現代の潮流に反するとして、批判の対象となっています。
2. 外国法の影響
第二に、フランス刑法典を模範としたことから、日本の法体系や伝統と必ずしも合致しない部分も散見されます。特に、罪刑法定主義や責任主義といった、近代刑法の基本原則が十分に具現化されていなかった点は、後の改正において重要な論点となりました。
3. 条文の抽象性
第三に、条文の多くが抽象的な表現で記述されているため、解釈や適用をめぐって様々な見解が生じる可能性があります。これは、法律の予測可能性や安定性を損ない、司法の恣意的な運用につながる危険性を孕んでいます。
4. 社会の変化への対応
最後に、情報化社会の進展やグローバル化の進展に伴い、サイバー犯罪や国際テロなど、従来の刑法では対応が困難な新たな犯罪が出現しています。ボワソナード刑法草案註解は、制定当時には想定されていなかったこれらの犯罪に対応するための規定を欠いており、現代の社会情勢に適合した法整備が求められています。